パリ · 建築
石の森に咲く、二輪の光の花
ノートルダム大聖堂 · パリ, フランス
聖堂の十字が交わるこの場所で、ゆっくりと左右に顔を向けてみてください。石の森に咲いた二輪の巨大な光の花、北と南のバラ窓が向かい合っています。北の窓は1250年、南の窓はその10年後に作られました。聖王ルイとして知られるルイ9世が聖堂に寄進したものだと伝えられています。左の北の窓は旧約を、右の南の窓は新約を象徴しています。
まずは北のバラ窓から。直径13メートル、マンションの4階ほどの高さに相当する巨大な円形窓です。全体に落ち着いた深い青の光が満ち、思わず心まで厳かな気持ちになります。13世紀に作られ、およそ800年の歳月を耐え抜いてきた貴重な作品です。この青い窓は、日の光がもっとも届きにくい北側の特性を生かし、救い主が来られる前、つまり旧約の時代を表しています。窓の中心には幼子イエスを抱く聖母マリアが小さく描かれ、そのまわりを80人あまりの旧約の人物が、幾重にも重なる花びらのように取り囲んでいます。預言者も王も、息をひそめて窓の中心の幼子イエスただ一点へと視線を注いでいて、「いつ来てくださるのか」という切なる待ち望みが、青い光のなかに満ちているかのようです。
次は、まったく反対側の南のバラ窓のほうへ体を向けてみましょう。空気ががらりと変わります。力強くて温かい赤い光が、聖堂のなかへ降りそそぐようです。旧約の約束がついに成就した新約の時代と、キリストの栄光を象徴しています。南の窓は直径だけで12.9メートル、周縁部まで含めると19メートルにも及ぶ圧巻の大きさです。窓の中心には復活したイエス、そのまわりには十二使徒と聖人たちが配されています。この窓は94個の円形レリーフと4つの大きな円からなり、まるで一冊の書物のように、イエスの生涯と、その時代をともに生きた人々の物語を伝えています。中心には十二使徒を表す12個の円形レリーフ、続く二つの円には殉教者と女性の聖人たち、4番目の円には天使たちとともに、聖ドニ、アンティオキアの聖マルガリタ、聖ウスタシュといった崇敬される聖人たちの姿が見られます。円のなかには旧約聖書の場面とともに、新約聖書のマタイによる福音書の物語も描かれています。窓の隅には、イエスの復活やアダムとイヴといった重要な場面が、下部には聖ペトロと使徒パウロが、上部にはマグダラのマリアと使徒ヨハネが見つかります。
窓の上部には、使徒たちに囲まれて栄光の座につくイエスの姿が荘厳に表されています。窓の下の細長いステンドグラス16枚は預言者たちを描いたもので、もともとはなく、19世紀の大聖堂の再建時に新たに加えられたものだそうです。ここには、ちょっとした秘密が隠されています。バラ窓の下に長く伸びる4つの窓をご覧ください。旧約の偉大な4人の預言者が、新約の4人の福音書記者を肩にのせた姿が描かれています。新約は旧約という巨人の肩に乗ってはじめて、より広く、より遠くを見渡せる、という意味なのです。この美しい二つの窓は、2019年のあの恐ろしい火災を耐え抜き、奇跡的に生き延びました。
職人たちが数千枚ものガラス片をひとつずつ、赤ん坊を扱うように慎重に取り外し、何年もかけて磨き、修復してくれたおかげで、私たちは今、火災の前よりもさらに明るく澄んだ、800年前の本来の色に出会っているのかもしれません。二つのバラ窓は聖堂をはさんで向かい合い、今も救いの偉大な物語を語り合っています。北からは「来られるであろう」という約束の歌が、南からは「ついに来られた」という歓喜の応えが、美しい光の対話となって響きわたる情景を思い描いてみてください。この二つの代表的なバラ窓のほかにも、さまざまなステンドグラスが石壁の黄金色と溶け合うさまを、ぜひ味わってみてください。








