ノートルダム大聖堂 · 16/21

パリ · 建築

内陣障壁の彫刻1 イエスの誕生と受難のはじまり

ノートルダム大聖堂 · パリ, フランス

このスポットの音声解説はアプリで MuseCatアプリ アプリで聴く

内陣障壁の前までやって来ました。多くの人が素通りしてしまいがちですが、ここではぜひ少し足を止めてみてください。右手に彫刻がずっと続いているのが見えますね。これが中世の傑作「内陣障壁の彫刻」です。この彫刻は、入口を基準に、内陣の左右の壁を飾っています。こちら側をご覧になったあと、荊冠を見て、戻る途中で右側の彫刻を見るという順路になっています。ただし、鑑賞にあたってひとつ注意があります。こちら側の彫刻は、物語が聖堂の奥、中心部から始まり、入口のほうへと流れてくる構成になっています。歩く向きのままに見ると、イエスの死から逆にたどってしまうことになるのです。ですから今は、彫刻を横目で眺めるだけにして、物語の始まりである聖堂の中央(翼廊)まで奥へと進み、そこから順に見ながら戻ってくるのがおすすめです。この石壁は、14世紀の芸術と信仰をそのまま映し出した、一冊の聖書と言えるでしょう。

この仕切り壁は14世紀に作られ、内陣席と、信者が行き交う回廊とを隔てる役割を果たしていました。ミサのあいだ、聖職者が外部から切り離されて儀式に集中できる、静かな空間をつくるためのものでした。このような仕切り壁は、もともと「ジューベ(jubé)」と呼ばれていました。2019年の火災後の修復作業中には、そのジューベの一部が見つかることもありました。ミサで司祭が「ジュベ・ドミネ・ベネディケレ(Jube, Domine, benedicere)」、つまり「主よ、祝福をお与えください」と祈りを唱え始めたことに由来し、その最初の言葉「ジュベ」が名前の由来となっています。

これらの彫刻は、14世紀初頭の彫刻家ピエール・ド・シェルの手から生まれたもので、イエスの誕生と生涯、そして受難のはじまりが刻まれています。物語は、聖母マリアが洗礼者ヨハネの母エリサベトを訪ねる「聖母訪問」の場面から始まります。続いて、天使が羊飼いたちに喜びの知らせを告げ、イエスの誕生と、東方の三博士が礼拝する敬虔な場面へとつながります。その先には、ヘロデ王による幼児虐殺を逃れてエジプトへ向かう「エジプト逃避」、幼いイエスが神殿で学者たちを前に聡明さを示す姿、洗礼を受ける場面、カナの婚礼で最初の奇跡を行う姿、エルサレム入城、弟子たちの足を洗う場面と最後の晩餐、そしてオリーブ山の園での苦悩まで、イエスの公的な生涯と受難のはじまりが、びっしりと刻まれています。聖書の内容と彫刻を見比べながら、ゆっくりご鑑賞ください。

音声ガイド

作品の前で、 再生するだけ。

アプリで聴く

無料ダウンロード · iPhone

iPhoneでスキャン

← マガジン一覧へ戻る

写真は ウィキメディア・コモンズ より。撮影:Uoaei1(CC BY-SA 4.0 / Public domain)。

写真 © TourLive(MuseCat の運営会社)