パリ · 建築
『ノートルダムのせむし男』のあらすじ
ノートルダム大聖堂 · パリ, フランス
ツアーを本格的に始める前に、時間がなくて小説を読めなかった方のために、この美しい聖堂を救った物語、『ノートルダムのせむし男』を簡単にご紹介します。物語は「愚者の祭り」という賑やかな街のお祭りから始まります。町じゅうの人々が通りに繰り出し、楽しく飲んで騒ぐ日でした。その祭りの中心にひとりの男がいました。背中が曲がり、片目がつぶれた、大聖堂の鐘つき男カジモドです。人々は彼の醜い姿を指さし、からかいます。そのとき、舞台の前に美しいジプシーの踊り子エスメラルダが歩み寄り、皆に嘲られていたカジモドに温かい水を一杯差し出します。ほんの一瞬の出来事でしたが、この小さな親切はカジモドにとって世界のすべてとなり、彼の心に消えることのない愛と献身の火を灯しました。
けれども、この美しい場面もつかの間、物語はやがて嫉妬と欲望へと突き進みます。聖堂の高位の司祭フロロが、エスメラルダを見て、抱いてはならない欲望にとらわれてしまうのです。それは愛ではなく、執着でした。フロロは、エスメラルダが想いを寄せていた伊達男の近衛隊長フェビュスをひそかに刺し、その罪をエスメラルダに着せてしまいます。今では想像しにくいことですが、当時の裁判はひどいものでした。彼女は無実の罪で魔女とされ、死刑を宣告されます。弱い者には、真実を叫ぶ力さえない時代でした。エスメラルダが刑場で命を絶たれようとしたそのとき、カジモドが綱を伝って降りてきて、彼女をさっと抱きかかえ、「聖域だ!」と叫びます。中世には、聖堂の中に逃げ込めば、王の軍隊でもむやみに捕らえることができなかったからです。
こうしてエスメラルダは、しばし命をつなぎとめます。しかし、この最後の望みも、王の権力の前に崩れ去ります。兵士たちが神聖な聖堂に踏み込み、彼女を引きずり出して、広場で刑を執行するのです。鐘楼の上から愛する女性の死を見届けたカジモドは、この悲劇を引き起こしておきながら嘲笑っていたフロロをつかまえ、高い鐘楼から突き落とします。すべてが終わったあと、彼の世界には深い悲しみだけが残りました。
この小説の登場人物は、それぞれが当時の社会の姿を映し出しています。カジモドは、外見のせいで生涯差別された疎外される人々を、エスメラルダは、ジプシーというだけで魔女狩りに遭った社会的弱者を象徴します。偽善的なフロロ司祭と、うわべだけ立派なフェビュス隊長は、当時の宗教界と貴族社会の腐敗した姿そのものでした。ヴィクトル・ユゴーは、この聖堂を舞台に、運命の名のもとに覆い隠された社会の不公平や偏見を告発したかったのです。もちろん小説にすぎませんが、作者は、ノートルダム大聖堂を、何百年ものあいだフランスの人々の愛と嫉妬、希望と絶望を静かに見つめてきた、生き証人として描いています。それがパリ市民のユゴーへの深い敬意と、大聖堂への大きな愛情の理由でもあるのです。