パリ · グルメ
パンの国フランス(1)バゲットとパン屋のランチ
パリ · パリ, フランス
パンとパン屋さんは、フランス人の食生活でもっとも大切な存在です。「パン」と聞くと、パン屋さんで売っている甘いものを思い浮かべる人も多いでしょうが、フランスの基準では、それはパンではなくpâtisserie(パティスリー)、つまり「菓子類」に分類されます。pâtisserieは、甘いもの(sucré)を食べるタイムにふさわしいケーキや焼き菓子のこと。フランスでパンというのは、小麦粉、塩、水、そして生地をふくらませるイーストの4つだけでできたものを指します。ただし、パンの範囲は文化圏によって異なり、甘い菓子類までパンと呼ぶところも少なくありません。
では、フランスにはどんなパンがあるのでしょうか。まずはバゲットです。バゲットはもともと、箸のように細長いものを指す言葉で、それが名前の由来だそうです。特徴は、外はパリッと、中はもっちりとしていること。焼きたてでほどよく温かいバゲットを、パン屋さんを出ながらかじる瞬間は、時間が止まってほしいと思うほどの幸せです。その職人技と文化がユネスコ無形文化遺産に登録された、250グラムの細長いバゲットは、まさにフランスの象徴。量が多いと感じたら、半分に切って売っているdemi-baguette(ドゥミ・バゲット)を買うこともでき、値段ももちろん半分です。パン屋さんでは、「Une demi-baguette, s'il vous plaît.」と言えば大丈夫。uneは女性名詞の前につく「ひとつ」の意味の冠詞ですが、これは省略しても、最後のs'il vous plaîtだけは絶対に省かないでください。パン屋さんににらまれてしまうかもしれません。バゲット1本の値段は、30年前は60サンチーム程度だったそうで、物価の高いパリで言えば、いまは1ユーロ10サンチーム前後です。
フランス人以外にはあまり知られていない話もあります。1993年、製パン協会が、伝統的なバゲットをより上質なスタイルでつくりはじめました。安い価格で大量にバゲットをつくってスーパーに納める工場式のやり方に対抗して、自分たちの権利を守るためでした。結果は大成功で、いまではほとんどのフランス人が、このtraditionを好んでいます。パリでの価格は1ユーロ30サンチームほどと、やや高めです。味わいや食感もバゲットとは少し違います。traditionは中がもっちりしていて、皮がずっと固いのが特徴です。話し手は、traditionのほうがおいしいとわかってはいても、皮が固すぎてあごが外れそうになるので、ふつうのバゲットを食べているそうです。とはいえ、フランスの人にとってパンとは、皮がパリッとしている程度ではなく、文字どおり固ければ固いほどおいしいパンなのです。それでも、traditionはぜひ試してみてください。
pain de campagne(パン・ド・カンパーニュ)は、大きくて丸い形のライ麦パンです。食物繊維が多くて消化によく、バゲットやtraditionよりも風味が豊かで、上品な印象があります。やわらかい中身の割合が大きいので、誰にでも食べやすいでしょう。パン屋さんでは、1個買うとスライスにしてくれるので、家で切る必要がありません。tartine用にトーストしてもおいしく、値段は少し高めで、400グラムあたり約2ユーロ50サンチームです。
食パンにあたるのがpain de mie(パン・ド・ミ)です。パンに分類されますが、唯一、牛乳、砂糖、バターが入っています。それでもフランス人は、これをsaléに分類します。このパンを使った代表的な料理が、croque-monsieur(クロック・ムッシュ)というフランス式の温かいサンドイッチです。pain de mieはとてもやわらかくて食べやすいので、子どものいる家庭でもよく食べられています。
このほかにも、全粒粉パン、さまざまな穀物が入った雑穀パン、イタリア風のパン、パン屋さんごとのオリジナルのパンなど、たくさんの種類があります。
旅行中に時間がないとき、パン屋さんはとても役に立ちます。たいていのパン屋さんが、ランチメニューを出しているからです。ただし、ランチタイムが終わると売らなくなるので、時間に合わせて行きましょう。フランスの会社員や学生が、お昼を食べに行く場所として、いちばんよく選ぶのがパン屋さんです。サンドイッチにドリンクとデザートまでついたセット、つまりformule(フォルミュール)は10ユーロほど。サンドイッチが苦手なら、plat du jour、つまり「本日のメニュー」として、簡単な料理を出すパン屋さんもあり、大きなボウルに入ったサラダやコールドパスタを売る店もあります。時間も節約できますし、天気のいい日に近くの公園で食べれば、また素敵な思い出になりますよ。ぜひ一度、パン屋さんを利用してみてください。




