フランスの食文化 · 5/22

パリ · グルメ

フランス人の家庭の食卓

パリ · パリ, フランス

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フランスの人々は、家でもレストランのようにきちんと食事をしているのでしょうか。答えは「いいえ」です。どこの国でもそうであるように、外食は特別な食事で、ふだんの家庭料理は簡単なものがほとんどです。こうした話は一般的な旅行ガイドブックやインターネットにはあまり載っていません。ここでは、話し手の家の食卓をありのままに紹介します。家での食事の少なくとも8割はフランス式なのだそうです。

朝はヨーグルトか、fromage blanc(フロマージュ・ブラン)を取り出します。fromage blancはヨーグルトの一種で、熟成のさせ方が違い、より濃厚でねっとりとしていて、酸味も強めです。これをボウルに入れ、ミューズリーを加えます。ミューズリーは、オートミールにいろいろな穀物とナッツ類を混ぜたシリアルの一種です。日によってバナナを切って入れたり、ラズベリーとブルーベリーを混ぜたりします。パンは、前日に食べ残したバゲットを1切れ焼いてtartine(タルティーヌ)にし、好きなジャムを塗ります。スーパーには、tartine用の焼いたパンもたくさん売られています。コーヒーはモカポットで淹れ、温かい牛乳を注いでcafé crèmeにして飲みます。

昼食の前菜entréeとして、いちばんよく登場するもののひとつが、にんじんの千切りサラダcarottes râpées(キャロット・ラペ)です。その名のとおり、生のにんじんを細く千切りにして、レモン汁とパセリをふりかけて食べる、拍子抜けするほど簡単な料理です。スーパーではこうした惣菜も種類豊富に売られているので、時間がないときはにんじんを切る手間もかかりません。

メインのplatは、忙しく働いているとなかなか料理ができないため、スーパーや市場の惣菜コーナーで半調理品を買って、オーブンやフライパンで火を通して食べるのが好きな人が多いです。惣菜コーナーが自分たちで作り、家で火を通す直前の段階まで用意して、その日のうちに売る、こうしたお店をtraiteur(トレトゥール)といいます。あとは火を通すだけなので手軽ですし、その日に売る新鮮な商品なので、保存料や化学添加物を使う必要もありません。話し手のお気に入りは、tomates farcies(トマト・ファルシ)。大きくて固いトマトの中身をくり抜き、牛ひき肉を詰めてオーブンで焼くだけの、典型的な地中海料理です。ふつうはお米と一緒に食べますが、もちもちしたお米は合いません。粘り気のない細長いお米をフライパンで炊いて添えると、これが絶品なのだとか。

デザートは、家で大がかりなものは食べず、スーパーで買ったもので十分です。話し手はバニラクリームのデザートをひとつ取り出して食べます。食事はエスプレッソですっきりと締めくくり、物足りないときは、家にある板チョコのダークチョコレートをエスプレッソにつけて食べます。

午後4時のグテの時間には、週末に焼いておいたオレンジケーキを出します。フランスでは各家庭にオーブンがあるのが当たり前なので、お菓子作りがとても盛んで、とくに子どものいる家庭では、休日に親子で一緒にお菓子を焼くのがごくふつうの日常です。飲み物は、コーヒーではなく紅茶にすることもあります。紅茶は種類が非常に多く、ブランドごとに独自のブレンドがあります。軽くてお土産にもぴったりなので、旅行の帰りに買って帰るのがおすすめです。ちなみに話し手は、家ではスーパーで買った3ユーロの箱入りティーバッグを淹れて飲むそうです。

夕食の前菜はサラダです。ボウルにアボカドとトマトを切って入れ、話し手がいちばん好きな、ほろ苦いルッコラの葉を加えます。ルッコラはイタリア語で、フランス語ではroquette(ロケット)といいます。オリーブオイルとバルサミコ酢を混ぜてかければ、フランスの家庭料理らしいentréeのできあがりです。ここに、コーン、エビ、そしてヤシの芽(coeur de palmier)も切って加え、全部混ぜて、パンと一緒にそのままplatとして食べることもあります。食事が軽くてさっと済むので、食欲がないときによく作るそうです。

メインは、市場で買った新鮮な牛肉をフライパンでsaignantに焼きます。じゃがいもは蒸してピュレにしますが、ピュレには必ず生クリームと、ナツメグ(muscade)というスパイスを入れます。酪農が盛んなフランスでは、生クリームは欠かせない食材です。クリームベースの料理の本場はフランス北部で、反対に南部はオリーブオイルをベースにした料理がほとんどです。肉とじゃがいもに野菜を添えますが、話し手がよく作るのがratatouille(ラタトゥイユ)。プロヴァンス地方の代表的な料理で、ひとことで言えば野菜の煮込みです。オリーブオイルでズッキーニ、ナス、パプリカ、玉ねぎ、にんにくなどをよく炒め、トマトソースとプロヴァンスのハーブを加えて、弱火で数時間煮込めば完成。作るのも簡単で、大量に作り置きすれば何日か食べられますし、冷凍しておいて後から食べてもよいのです。温かくても冷たくても食べられ、とくに夏はフランスの国民的な野菜料理として親しまれています。最後のデザートは、いちごヨーグルトで締めくくります。

フランスでは、伝統的に家族そろって食事をすることをとても大切にします。けれども共働きの家庭がほとんどで、毎回手間をかけて料理をするのは難しく、それぞれが一人で食事を済ませることも少なくありません。フランスにも、意外なほど仕事に追われる人がたくさんいて、首都パリはとくにそうです。こうした社会の事情のなかで、食事の悩みを解決してくれる救世主が、フランス国民的な冷凍食品ブランドのPicard(ピカール)です。Picardは、質の高い新鮮な冷凍食材や食品を扱うスーパーのチェーンで、パリ市内だけで数十店舗あります。現地に住んでいなければ利用する機会は少ないでしょうが、パリでの滞在が長く、宿泊先で調理ができるなら、とくに1か月の暮らしを計画しているなら、ぜひ試してみてください。調理済みの食品を、説明書どおりに鍋や電子レンジ、オーブンなどで温めるだけでよく、カット済みの野菜からパン、コースごとの料理まで、ないものはないというほど何でもそろっています。価格のわりに味と品質がよく、ここでしか買わない品物があるほどだそうです。

つまり、フランスの家庭料理はとてもカジュアルです。ポトフ、コック・オ・ヴァン、オニオンスープなど、外国の人にはおなじみのフランスの伝統料理は、家ではめったに作りません。これが、ごくありふれたフランスの家庭の食卓です。

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