パリ · 建築
二つの世界と、鉄の秘密
サント・シャペル · パリ, フランス
サント・シャペルは、二つの礼拝堂が上下に重なった建物です。800年前、正面入口の前で人々は二手に分かれました。下の階の扉からは、王宮の使用人や侍従たちが入り、上の階は王とその家族だけの空間でした。王はこの扉を一切使いませんでした。居室から上の階へまっすぐ続く専用の通路が別にあったからです。
この二層構造は、身分の区別だけを意味するものではありません。中世の人々は、宇宙を階層として捉えていました。下は暗く重い地上の世界、上は光に満ちた天上の世界。この建物は、そんな宇宙観をそのまま石で造り上げたものなのです。薄暗い下層は人間の世界、まばゆい上層は天国。このあと上る狭いらせん階段は、闇から光へ、地上から天上へと昇る旅を凝縮した象徴でもあります。
こうした二層の礼拝堂の原型は、800年代にカール大帝が自らの宮殿に建てたアーヘンの礼拝堂です。カール大帝の騎馬像は、ノートルダム大聖堂の前にも立っています。ルイ9世はそれをモデルに、「私はカール大帝の後継者であり、皇帝にも並ぶ王である」という政治的な宣言を、建物の構造で示したのです。正面入口の彫刻には、二つの紋章が繰り返し現れます。先ほどもお話しした、フランス王家の百合と、カスティーリャの城です。
さて、この建物最大の秘密に迫りましょう。上階に上がると、誰もが驚きます。壁がほとんどないのです。細い石の柱のあいだに、高さ15メートルのガラス窓が立ち並ぶだけ。常識的には不可能な構造です。重い天井の荷重が細い柱だけにかかれば、柱は外へ開いて崩れてしまいます。だから普通のゴシック聖堂は、外側に蜘蛛の脚のような控え壁をたくさん取り付けるのですが、サント・シャペルにはそれもほとんどありません。いったいどうやって、800年も持ちこたえてきたのでしょうか。
秘密は鎖にあります。13世紀の名もなき建築家は、石を減らす代わりに、石の中に鉄を隠しました。長くて頑丈な鉄の棒をつないで、建物全体をぐるりと囲む鎖の帯を作ったのです。それも上、中、下の3本。樽がはじけないように鉄の箍(たが)をはめるように、この3本の鎖が、外へ開こうとする力をすべて受け止めています。学者たちはこれを「武装した石」と呼びます。ほかの聖堂にも鉄は少しずつ使われていますが、壁をほぼ取り払ったこの建物では、鉄が事実上、建物の命運を握っているのです。
上階に行けば、その証拠を自分の目で確かめられます。大きな窓の中央を横切る黒い横棒は、すべて鉄。ガラスを支えると同時に、建物の骨格の役目も果たしています。19世紀にヴィオレ・ル・デュクが、この鎖の構造を描いた図面が残っています。蜘蛛の巣のように精緻な図面を見れば、13世紀の建築家の計算がいかに緻密だったかがわかります。私たちの目に映るのは石とガラスだけですが、その間に隠れた800年前の鉄の骨組みが、この魔法を支え続けているのです。











