パリ · 建築
ベルリオーズの胸像と『幻想交響曲』
オペラ・ガルニエ · パリ, フランス
劇場を取り囲む胸像は、17世紀から19世紀末にかけて活躍したフランスの芸術家たちの姿です。その中のこの胸像は、作曲家エクトル・ベルリオーズのもので、オペラ劇場と縁の深い人物です。
ベルリオーズは医師の父のもとで育ち、医学部にまで進みましたが、作曲家になる夢を捨てませんでした。楽器を独学で身につけ、オペラ劇場にもほとんど毎日のように通っていたそうです。結局は医学の道を断念し、遅れてパリ音楽院に入学して作曲家となり、オペラの作曲にも挑戦しました。ただ、残念ながらオペラ作品は大きな成功を収めることはできませんでした。
彼の名を世に知らしめたのは、型破りな交響曲『幻想交響曲』です。交響曲とは、大規模なオーケストラで演奏される合奏曲のことで、英語ではシンフォニーといいます。ベルリオーズはとくに標題音楽で知られていました。標題音楽とは、曲にタイトルをつけて、特定のテーマや物語を表現する音楽のことです。『幻想交響曲』は、失恋の苦しみから薬物に溺れ、幻覚に悩まされる若い芸術家を描いた作品で、ベルリオーズ自身の片思いの経験が反映されているといわれています。
彼が恋い焦がれたのは、3歳年上のイギリスの劇団の女優、ハリエット・スミッソンでした。ベルリオーズは英語まで懸命に勉強して思いを込めた手紙を送りましたが、名前も知らない一介の学生の手紙に返事が来るはずもなく、一方的な片思いに終わりました。彼はこの切ない経験をもとに『幻想交響曲』を作曲します。のちに作曲家としての地位を確立したベルリオーズは、ついにスミッソンと結婚しますが、残念ながら結婚から10年で別居したそうです。『幻想交響曲』を聴きながら、ベルリオーズの愛、切なさ、怒り、絶望に思いをはせてみるのもよいでしょう。