パリ · 絵画
影なき影、ゴッホ『オーヴェルの教会』
オルセー美術館 · パリ, フランス
ゴッホが命を絶つ前の最後の二か月を過ごした、パリ近郊の小さな村、オーヴェル=シュル=オワーズ。この絵は、その村にある教会を描いた作品である。
この絵で最も目を引く特徴は光の対比だ。教会の前で二手に分かれて伸びる道は明るく輝いている。ところが教会の建物を見ると、印象はまったく違う。建物を取り囲む空からして暗く、まるで厚い雲が立ち込めているかのような雰囲気だ。教会そのものも、雨に打たれたかのように湿っぽく、重く、暗く描かれている。
教会の前には濃い影が落ちているが、ここで興味深い点が見つかる。太陽光は一方向から差すものなので、教会の前側に影ができているなら、同じ方向を歩いている左側の道の女性にも同じように影ができるはずだ。しかし彼女の影は絵のどこにも見当たらない。つまり、この教会の影は実際の日光という自然条件から生まれたものではなく、ゴッホが意図的に描き加えたものなのだ。
教会の輪郭線もまた、今にも崩れ落ちそうにうねうねと表現されている。実際のこの教会は13世紀初頭にゴシック様式で建てられた建物で、非常に端正な外観を持っている。それならば、ゴッホはなぜこれほど教会を暗く、不安定な姿に描いたのだろうか。
ゴッホの父は教会の牧師であり、ゴッホ自身も若い頃ベルギーで牧師になるために奉仕活動をしていたが、教会から追い出された経験がある。その頃弟テオに宛てた手紙の中で、彼は自分たちの神をシェイクスピアの小説に出てくる酔っ払いの神に例え、教会の説教が空虚で意味がないとも語っていた。教会に対してかなりの懐疑を抱いていたようで、そうした思いがこの暗くうねる教会の姿につながったのかもしれない。
オーヴェル=シュル=オワーズは、パリから電車で遠くない、とても静かで落ち着いた、美しい村である。ゴッホが晩年を過ごした家、この教会、そしてもう一つの代表作であるカラスの飛ぶ麦畑もすべて見て回ることができ、ゴッホが生涯を終えた場所でもあるため、彼の墓もここにある。パリでの滞在に余裕があれば、一度訪れてみる価値のある場所だ。

