パリ · 絵画
正確な描写よりも色彩を、ゴッホ『アルルの寝室』
オルセー美術館 · パリ, フランス
ゴッホがアルルで暮らしていた部屋を描いた『アルルの寝室』。この絵は室内の遠近感や空間感を正確に表現することには関心がない。ベッドは誇張されて大きく描かれ、右側の壁も過度に広がった様子になっている。
ゴッホがこの絵に込めたかったのは精密な描写ではなく、色彩だった。『星月夜』でそうだったように、ここでも互いに正反対の色を並べて配置している。壁は淡い紫、椅子とベッドは黄色、洗面台は青で塗られており、補色同士を並べることで互いをより際立たせる効果を狙ったものだ。ゴッホは弟テオに宛てた手紙の中で、この絵を通して「安らぎ」を表現したかったと書いている。その手紙には部屋のスケッチとともに、部屋を塗った色によって自分の部屋が持つ単純さを表したいという言葉が綴られている。
当時多くの印象派画家たちがそうであったように、ゴッホもまた日本美術と文化から深い影響を受けていた。この絵を描く際にも日本の版画からインスピレーションを得て、影を大胆に省略し、そのため空間の角度がいくぶん歪んで表現されている。ゴッホが疲れ果てたパリの生活からの逃げ場としてアルルを選んだ理由の一つも、アルルが日本に似ていると感じたからだった。実際には日本に行ったことは一度もなかったが、アルルに到着した後、テオにここはまるで日本のようだと伝えたりもしている。
この絵は、ゴッホが意図的に明るく描いた作品でもある。彼はこの家を複数の画家たちが集まって絵を描き、議論を交わせる場所にしたいと願っており、その思いからゴーギャンにこの部屋をスケッチした手紙を送り、アルルに来てほしいと頼んだ。手紙には絵についての詳細な説明とともに、自分の作品を評価してほしいという頼みも書かれていた。そうしてゴーギャンがアルルを訪れ、ゴッホと共に暮らすことになったが、結局二人は性格の違いから決別することになる。
ゴッホは『アルルの寝室』という同じ題名で、似たような絵を三点描いている。最初のものは現在アムステルダムのゴッホ美術館にあるが、ゴッホが一時入院していた間に水に濡れて傷んでしまったため、退院後に二枚目を描き直した。その絵は現在シカゴ美術館に所蔵されている。そして三番目に描かれた作品が、まさに今見ているこの絵で、母と妹に贈るために描かれたため、サイズがやや小さい。三作品はトーンに多少の違いはあるものの、全体として大きくは異ならない。ただし右側の壁に掛けられた肖像画の人物の顔は、作品ごとに異なって描かれている。なぜ毎回違う顔を描いたのかについては、今のところ知られていない。




