オルセー美術館 · 43/82

パリ · 絵画

黒を使わずに描いた夜空、ゴッホ『ローヌ川の星月夜』

オルセー美術館 · パリ, フランス

オルセー美術館
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オルセー美術館で最も有名な絵を一つ挙げるとすれば、おそらくこの作品、フィンセント・ファン・ゴッホの『ローヌ川の星月夜』だろう。苦しかったパリでの生活に区切りをつけてアルルへ下ったゴッホにとって、そこで過ごした時間は人生で最も幸せなひとときであり、その感情がそのままこの絵に込められている。

背景はアルルを流れるローヌ川の夕暮れの風景である。空に浮かぶ星々のうち中央の七つは北斗七星を表しており、川向こうの村の建物の合間に見えるオレンジ色の光は、当時街を照らしていたガス灯だ。その灯りが川面に長く映り込み、絵の右下には散歩する恋人同士が小さく描かれている。

この絵で注目すべきは夜の色彩である。アルルでゴッホは夜を表現することに深く魅了されていた。弟テオには星月夜を描きたいと語り、妹には昼よりも夜の色のほうが豊かだと話していた。夜には紫や青、緑がずっと強烈に現れるというのがゴッホの考えだった。私たちの目にはただ真っ暗にしか見えない夜空に、彼は紫や青、緑を見出したのであり、その結果この絵の夜空には黒い絵の具が一切使われていない。

色彩の対比もまた興味深い。青と黄色は互いに補色の関係にあり、並べて配置すると互いをより際立たせる効果を生むため、絵の中の黄色い星がひときわ明るく鮮やかに見える。川面に映る村の灯りは短い筆致を長くつなげて描かれており、ローヌ川の波が揺れるたびに光も共に揺らめくような効果を生み出している。

ゴッホの絵は写真や画面で見るのと実際に見るのとでは印象がかなり異なるが、これは厚く塗り重ねられた絵の具の質感によるものだ。彼が好んで用いたインパスト技法で、近くで見ると絵の具が盛り上がって積み重なった様子が確認できる。

時々この絵を見て「自分が知っている星月夜とは違う」と言う人がいるが、その人が思い浮かべているのはおそらくニューヨーク近代美術館が所蔵するもう一つの『星月夜』だろう。同じ題名だが印象はかなり異なる。ニューヨーク近代美術館の作品ははるかに強烈で、ダイナミックで、やや混乱した印象を与える。この絵を描いた当時、ゴッホはさまざまな精神的問題でサン=レミの療養院に入院しており、その不安定な心理状態が画面にも反映されている。一方、今見ているこの『ローヌ川の星月夜』は、はるかに穏やかな印象を与える。アルルの温暖な環境を愛し、自分だけの画風を見つけ発展させていた時期、夢と希望に満ちていたゴッホの感情が、この絵をはじめアルルで描かれたすべての作品に染み込んでいる。実際、精神治療の分野では、心が不安定な人々にこの絵を美術療法の一環として見せることもあるそうで、ゴッホが描いた青い光が彼らの心に安らぎを与えるという。

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