パリ · 絵画
友を偲んで描いた絵、シニャック『井戸端の女たち』
オルセー美術館 · パリ, フランス
この絵の舞台は、フランス南東部のリゾート地サントロペである。シニャックは実際にサントロペにある灯台や井戸、教会などを一つの画面に集めてこの絵を完成させたが、本当に注目すべきなのは背景そのものではなく、シニャック特有の点描法だ。点描法とは、色を塗るのではなく点を打って形を作る技法を指す。
この絵が描かれた1892年は、点描法の創始者ジョルジュ・スーラが世を去った翌年だった。もともとモネの影響を受けて印象派の画風を追っていたシニャックは、ある独立展でスーラの点描法による絵を見て深く魅了され、スーラ本人からこの技法を学び、ともに新印象派の画家としての道を歩むことになった。しかしスーラは32歳という若さで不意に世を去り、友であり同僚であり、新印象派の創始者でもある人物を失ったシニャックの喪失感は計り知れなかっただろう。心を癒すために訪れた場所こそがサントロペであり、そこで完成させた作品がこの『井戸端の女たち』である。
専門家たちは、シニャック自身も気づかぬうちに、スーラの最後の作品『サーカス』がこの絵に深い影を落としていると指摘する。シニャックの絵では、右側に水を汲む女性たちの動的な動きがあり、反対側の海は穏やかで静的な風景が対比をなしている。『サーカス』もまた似たような画面分割を見せており、公演が繰り広げられる中央は躍動的である一方、観客席は対照的に静的だ。絵の下部に描かれた緑色の草地のやや奇妙な模様は、『サーカス』に登場するピエロの頭部と襟の模様とどこか似た印象を与える。そして絵の中のうねうねとした丘の道は、『サーカス』で団長が振るう鞭の曲線とも似ている。友の遺作を無意識のうちに自らの絵に取り込むほど、シニャックはスーラを恋しく思っていたというわけだ。
スーラが世を去った後も、シニャックは新印象派の画家であり理論家として精力的に活動を続けた。その結果、新印象派の画風は後の世代の画家たちにも広く伝わり、大きな影響を残した。