パリ · 絵画
焼失した原画の面影、ドラクロワ『獅子狩り』
オルセー美術館 · パリ, フランス
ロマン主義を代表する画家ドラクロワの『獅子狩り』は、新古典主義とは明らかに異なる、感情的で激しい雰囲気をたたえている。色彩感覚も卓越しており、フランスの詩人ボードレールはこの絵について「目に映った色彩が心の奥底まで貫く」と評したほどだ。
ただ色彩は見事なのに、絵の形そのものは一目で把握しづらい。よく見ると馬に乗った狩人たちが獅子2頭を狩る場面なのだが、印をつけなければ気づかないほど荒々しく描かれている。これには理由がある。ドラクロワは1854年に依頼を受け、以前から描きたかった獅子狩りを題材に完成作を仕上げ、その完成作はフランス南部ボルドーに展示された。しかし1870年の火災でその完成作は焼失してしまう。今私たちが見ているこの絵は、焼失した完成作そのものではなく、ドラクロワが本制作に入る前に感覚をつかむために描いた下絵である。展示を前提に描いたものではないため、荒く残っているのだ。幸い、原作とほぼ同じ構図の小品が現在スウェーデン国立美術館に残っており、焼失した原作がどのような姿だったかを窺い知ることができる。
ドラクロワは狩りの場面や動物同士の闘いを特に好んで描いたが、北アフリカのモロッコを旅した際、ヨーロッパとは異なる異国情緒あふれる風景に魅了された経験が大きな影響を与えている。スウェーデン国立美術館の小品を見ると、絵の中の人物たちの服装がヨーロッパ式ではなく、手にした剣もイスラム圏で使われていた形のものであることがわかる。彼はこうした場面を描くために北アフリカの人々の暮らしを研究し、獅子や虎を見るために動物園へ足しげく通い、動物を観察した。
決定的だったのは、ドラクロワがこの題材を選んだきっかけが、ルーベンスの『狩り』連作から受けた深い感銘だったという点だ。躍動感あふれる劇的な構成、エネルギーに満ちた画面、そして多彩で深みのある色彩は、ルーベンスから受けた影響をそのまま物語っている。