パリ · 建築
聖母マリアの扉
ノートルダム大聖堂 · パリ, フランス
西ファサードの左の扉、聖母の扉の前に立ちました。「私たちの貴婦人」、つまり聖母を意味する名を持つこの大聖堂において、この扉は聖母マリアに捧げられた荘厳な一編の詩のようです。
まず、扉の中央を支える柱、トリュモーに注目しましょう。幼子イエスを抱いた聖母マリアが立ち、その足元には蛇を踏みつけている姿が見えますね。悪の象徴であるサタンへの勝利と、救いのはじまりを告げる、この扉全体の核となるテーマです。それにしても、なぜ天国へ入る扉のすぐ下に、人類最初の過ちの物語が先に登場するのでしょうか。それは、対比によってマリアの役割をより劇的に見せるためです。イヴの不従順が罪をもたらしたのなら、新しいイヴである聖母マリアの従順が、救い主をこの世に迎えたのだという神学的なメッセージが込められています。
視線を上へ移し、扉の上のアーチ形の空間、ティンパヌムを見てみましょう。物語は下から上へと進みます。いちばん下の段には旧約時代の預言者や王たちがおり、その中央には契約の箱が置かれています。ここで興味深い象徴が登場します。かつての契約の箱には、十戒の石板、つまり神の言葉が納められていました。ところが聖母マリアは、「言葉が人となった方」、つまりイエスその方を宿したのですから、新しい契約の箱だというのです。その上の段には、十二使徒が見守るなかでマリアが臨終を迎え、天使たちが魂を天へ連れていく、聖母の永眠と被昇天の場面が続きます。そしててっぺんには、キリストの隣の玉座に座り、天使から冠を授かる天の女王となったマリアの、栄光に満ちた姿があります。この扉が語ろうとした物語の、もっとも輝かしい結末です。
最後に、扉の両脇の彫刻を見てみましょう。柱の左側に並ぶ彫刻のうち、いちばん左には、キリスト教を公認したコンスタンティヌス帝と、フランス最初の殉教者として切り落とされた首を手に持つ聖ドニ司教の彫刻があります。そして右側には、パリの守護聖人である聖ジュヌヴィエーヴがいます。


