パリ · 建築
最後の審判の扉
ノートルダム大聖堂 · パリ, フランス
西ファサードの心臓部であり、最大の見どころといえる3つの扉には、聖書一冊分の物語が、劇的に刻まれています。中央が「最後の審判の扉」、左が「聖母マリアの扉」、右が「聖アンナの扉」です。まずは中央の最後の審判の扉から、彫刻が語る物語を読み解いていきましょう。
扉の上の半円形の空間の中央には、威厳に満ちた姿のキリストが玉座に座っています。ところが、よく見ると不思議な点があります。裁きの王であるはずのキリストが、両手の釘の跡をそのまま見せているのです。恐ろしい裁判官の姿だけでなく、人類のために犠牲となった救い主の姿も一緒に示すことで、裁きの中にも救いの可能性は開かれているという、希望のメッセージを伝えているのです。キリストの両脇では天使たちが十字架や槍、釘といった受難の道具を持ち、その後ろでは聖母マリアと洗礼者ヨハネが、人類のために切に祈っています。
すぐ下の横長の石、まぐさ石に目を移すと、上段には有名な「魂の秤」の場面が広がっています。大天使ミカエルが秤を手に、善い魂と悪い魂を選り分けています。小さな悪魔がひとり、秤の片側を自分のほうへ引き下ろそうと、必死にしがみついているのも見えますね。秤にかけ終わると、選ばれた魂はキリストの右側の天国へ、呪われた魂は鎖につながれ、左側の恐ろしい地獄へと連れていかれます。その下には、審判の日に天使がラッパを吹き、死者たちが墓から目覚める復活の場面が、迫真の表現で彫られています。教皇も王も騎士も女性もいます。裁きの前では、身分も、どんな違いも例外ではないという、力強いメッセージです。
とはいえ、この彫刻は、今私たちが見ている姿が当初のままというわけではありません。1792年のフランス革命の際、聖堂を憎んだ革命家たちが、この扉にあった十二使徒像のほとんどを破壊しました。いま扉の脇に立つ使徒像は、19世紀に建築家ヴィオレ・ル・デュクが作り直し、修復したものです。扉の左側の6人の使徒は、左から順に、バルトロマイ、シモン、アルファイの子小ヤコブ、アンデレ、ヨハネ、ペトロ。右側の6人は左から順に、パウロ、ゼベダイの子大ヤコブ、トマス、フィリポ、ユダ・タダイ、マタイです。また18世紀には、王の行列が通りやすいようにと、現在イエスが彫られている中央の柱が取り払われたこともありました。

