パリ · 宮殿・各室
ナポレオンが眠るドーム教会
アンヴァリッド · パリ, フランス
入口を入ると、広場のように開けた四角い空間が広がります。「栄光の中庭」と呼ばれるこの場所では、正門でも見かけた17〜19世紀の大砲が並んでいます。向かい側には、サン・ルイ・デ・ザンヴァリッド教会と、王室礼拝堂として建てられたドーム教会があります。ナポレオン1世の墓があるのは、このドーム教会です。アンヴァリッドは複合施設のため構造が複雑に感じられますので、地図も参考にしてください。軍事博物館へ進む前に、まずはナポレオン1世が安置されているドーム教会を見学しましょう。
ドーム教会は、フランスを代表するバロック様式の建築で、フランス古典主義の様式も併せ持っています。華やかで壮大、そして誇張された表現が特徴です。バロックとは、ルネサンス以降、17〜18世紀のヨーロッパを中心に建築・絵画・彫刻などに現れた様式のこと。古代ギリシャ美術を最高のものと考えたドイツの美術史家ヴィンケルマンが、「いびつな真珠」を意味するポルトガル語からこの言葉を取ったと伝えられています。バロックは劇的な表現のために形を変形・誇張し、強い印象を与えることをめざしました。ドーム教会は外観だけでなく内部もフレスコ画などで華麗に装飾されています。ドームの天井には、天使たちに囲まれた栄光の中の聖王ルイを描いた絵があり、1702年から1706年にかけて制作されました。
祭壇のほうへ進むと、頭上には黄金のドームの内側を見上げることができ、ドームの真下の地下にナポレオンの墓所があります。ナポレオン・ボナパルトという名前は、きっと誰もが一度は耳にしたことがあるでしょう。フランスの偉大な指導者、英雄として知られる彼は、軍人として遠征で勝利を重ねて名声を得て、フランス革命後には第一統領となりました。権力を握ったのちは帝政に移行し、改革を進めます。しかし1812年のロシア遠征に失敗してエルバ島に流され、脱出したものの1815年のワーテルローの戦いにも敗れ、大西洋に浮かぶセントヘレナ島に流されて、その地で生涯を閉じました。栄華を極めた政治的名声と、寂しい晩年は、鮮やかな対照をなしています。
ナポレオンの石棺は、地下に下りなくても1階から見下ろせるよう設計されており、階段で地下へ下りることもできます。ドーム教会は、ナポレオンの墓の場所をつくるため、1842年と1853年に改修されました。石棺は緑色の花崗岩の台座の上にあり、赤い石でつくられた棺はかなりの大きさです。
ここにはナポレオンのほか、軍事的功績を残した戦争の英雄やフランスの将軍たちも安置されています。フランスの偉人を祀るパリのパンテオンのように、アンヴァリッドは軍事的功績を挙げた軍人たちをたたえる場所といえるでしょう。



