パリ · ショッピング
当時のパリジャンを魅了した準贅沢品と人気アイテム
パリ · パリ, フランス
身分社会では、ヨーロッパに限らず多くの社会で、身につける服、つまり衣服は身分を示す要素でした。しかし、産業革命と技術の発展で既製服が登場し、価格が下がるにつれ、庶民とブルジョワの服装は次第に似通ってきます。大多数の労働者の外見が自分たちに近づいたことで、ブルジョワはもはや見た目で身分を区別できなくなりました。これを不安に思ったブルジョワは、新しい商品で自分たちを区別しようとします。当時の人気商品と贅沢品のなかから、4つをご紹介しましょう。
1つ目は日傘です。今では誰もが差す身近な品ですが、かつては上流階級の女性のものでした。屋外で働く労働者と区別するために、そして当時の上流階級の女性の美の基準だった「白い顔」を保つために、日差しから肌を守る日傘は必需品でした。男性にとっては、ネクタイが同じ役割を果たしました。もともと貴族だけが身につけていたネクタイは、結び方や種類によって使い方が難しく、きちんと着こなすには繊細な技術が必要でした。それを適切に使いこなすだけで、さりげなく身分を表し、自分が特別な存在であることを示せたのです。こうした衣服のアクセサリーによって、上流階級を真似て庶民と自分を区別できました。これらの商品は大流行し、百貨店がさまざまな種類や生地で販売することで、売上を押し上げました。
残る2つは、衣服のアクセサリーではなく贅沢品で、主に百貨店の1階で見かける宝石と香水です。
宝石は今も高価ですが、当時も女性の美的欲求を満たし、外見上の地位を高めてくれる品でした。パリの宝飾産業は、ナポレオン3世が皇帝になると、皇室や上流階級の贅沢に支えられて成長します。宝飾産業が発展するにつれ、現在のラ・ペ通りやヴァンドーム広場に高級宝石職人たちが店を構えました。今も高級ジュエリーブランドとして知られるカルティエも、この時期にヴァンドーム広場に初めて登場しています。宝石が上流階級に広まると、中産階級の女性にとっても、上流階級の女性と肩を並べていることを示せる贅沢品として定着しました。しかし高級宝石はあまりに高価で、百貨店で売られていた比較的手頃な宝石でさえ、1か月分の給料かそれ以上でした。宝石を買う経済力のなかった中産階級は、安価な模造宝石によって、上流階級に似た見た目と地位を手にし、美的欲求を満たしたのです。
香水の背景には、18世紀半ば以降、公衆衛生への関心が高まり、「におい」への関心も強まった流れがあります。ブルジョワは、不衛生な環境で働く労働者は悪臭がすると考え、香水で自分たちを区別しようとしました。人気だったのは、ほのかな花の香りです。強い動物性の香りは体臭を隠すために使うものと見なされたのに対し、ほのかな花の香りは、当時の女性の美徳とされた「慎み深さ」のイメージを表すと考えられたのです。香水は初め、一握りの上流階級しか買えない贅沢品でしたが、技術革新で価格が下がり、中産階級にまで広がりました。
香水瓶が華やかなのも、そのためです。実際には香りのする液体を入れた容器にすぎないのに、パッケージやデザインを華やかにしたのは、中産階級に「贅沢品は美しい」というイメージを植えつけ、「美しいものが自分を美しくしてくれる」という芸術的な価値を表現するためでした。当時の女性たちは、香水を買うことで、香りだけでなく、労働者と区別される社会的地位や、望ましい女性像という価値も一緒に手に入れていたのです。