パリ · ショッピング
ブシコーが人々を引き寄せた方法
パリ · パリ, フランス
ブシコーが人を呼び込んだ方法の核心は、「何よりも商品を目立たせる」ことでした。百貨店の外壁に大きなマネキンが立ち、建物に沿ってショーウィンドウが続く光景は、今でもおなじみです。それを見て「ここは百貨店だ」と気づいたり、気になって中に入ってみたりした経験がある方も多いでしょう。ブシコーは、百貨店とその中の商品をひとつの「ショー」、つまり見せ物に仕立て上げたのです。
最初の見どころは、ショーウィンドウの中の商品です。アーケード・パサージュの店も、ほかの流行品店もショーウィンドウで商品を紹介していましたが、規模が大きくなった百貨店のウィンドウは桁違いでした。アーケード・パサージュと比べると、百貨店のウィンドウははるかに華やかで大規模で、パリの街を歩く人や乗合馬車で移動する人が、思わず足を止めて見入るほどでした。
パリの百貨店が誕生した時代を舞台にしたエミール・ゾラの小説『ボヌール・デ・ダム百貨店(ご婦人方の楽園)』には、こんな一節があります。「正面入口の前に高く積まれた陳列台に見とれて、われを忘れていた。山と積まれたおとり商品が、通りがかりの人々の足を止めていたのだ。幼いペペでさえ、目を丸くして見入っていた。」当時の百貨店のショーウィンドウが、パリジャンにとってどれほど新鮮な衝撃だったかがうかがえます。同じ手法は店内でも使われました。高く積み上げられた商品やディスプレイは、百貨店の入口からも見えるほどの規模で、通りがかる人々を引き止めるには十分でした。
百貨店をショーの舞台にするには、商品を見せる広い空間と、商品を明るく照らす光が欠かせません。ブシコーはそのために、ギュスターヴ・エッフェルを訪ねました。そう、エッフェル塔をつくったあのエッフェルです。広大な空間とガラス張りの天井をつくるには鉄骨構造が有利で、鉄骨を建築に巧みに生かしたエッフェルはうってつけの人物でした。ブシコーはボン・マルシェの増築工事をエッフェルに任せ、百貨店をひとつのショーの空間に仕立てて、パリジャンを呼び込むことに成功したのです。
ブシコーは、百貨店を商取引の場というより、見せ物を提供する場所にしました。では、彼の狙いどおりに設計された店内は、どのように購買へと結びついたのでしょうか。続く章で見ていきます。




