パリ · 宮殿・各室
ヘラクレスの間
ヴェルサイユ宮殿 · パリ, フランス
これまで通ってきた部屋とは規模そのものが異なるこの空間から、いわゆる「王のアパルトマン」が始まる。アパルトマンとは本来、宮殿内にある独立した生活空間を意味するが、ここは王がくつろいで過ごす私的な空間というよりも、ヨーロッパ各地から集まった貴族たちの前で、自らが太陽王であることを演出するための舞台に近かった。これから全部で7つの部屋が続き、それぞれが太陽であるルイ14世の周りを巡る惑星を象徴し、天井にはその惑星を司る神が描かれている。
この部屋の天井には、ヘラクレスが神となってオリンポスへと昇っていく場面が描かれており、その周囲には力、忍耐、正義、慎重さを象徴する人物たちが配され、ルイ14世の英雄的な一面を表している。
部屋の壁一面を覆う絵画は「シモンの家の晩餐」である。シモンがイエスを自宅に招いて食事をもてなす中、罪人であるマリアが自らの髪でイエスの足を洗う場面が描かれている。この絵画は、ヴェネツィア共和国がフランスとの関係強化のためにルイ14世に贈ったものである。ルイ14世もこの作品を大いに気に入っていたが、あまりに巨大であったため、掛けるにふさわしい場所を見つけるのは容易ではなかった。当初はルーヴルなどに保管されていたが、ヴェルサイユ宮殿の増築に伴い、この絵画専用の空間が設けられることとなった。それがこのヘラクレスの間である。王のアパルトマンの最初の関門にあたるこの部屋に、これほど貴重な贈り物を飾ることで、訪れる者たちに「太陽王とはこれほどの贈り物を受け取る存在なのだ」と印象づける効果があった。その華やかさにふさわしく、この空間は当時、宴会の場としても用いられた。