パリ · 訪問のヒント
レ・ドゥ・マゴ、芸術家たちの文学カフェ
サン・ジェルマン・デ・プレ · パリ, フランス
横断歩道を渡ればすぐに見えるここが、1885年に開業したカフェ「レ・ドゥ・マゴ(Les Deux Magots)」です。グルメスポットというより、名所としておすすめの場所です。解説を聞くときは、人の少ない端のほうに寄って聞くのがよいでしょう。
「レ・ドゥ・マゴ」という名前は、店内に置かれた2体の中国の陶器人形に由来します。フランス語でdeuxは数字の2、magotは陶器の人形を意味します。カフェを開く前、ここは中国の絹を売る店だったそうです。そこで、絹の原産地である中国を象徴する人形を店内に2体置き、「ドゥ・マゴ」と名づけました。
このカフェは19世紀末から20世紀半ばにかけて、数多くの芸術家、文学者、哲学者に愛され、「文学カフェ」というあだ名がついたほどです。フランスの作家であり哲学者で、女性解放運動の先駆者でもあったシモーヌ・ド・ボーヴォワール、彼女と自由な契約結婚を結び、生涯をともにした実存主義哲学の代表的人物ジャン=ポール・サルトルのほか、アーネスト・ヘミングウェイ、パブロ・ピカソ、『星の王子さま』を書いたサン=テグジュペリ、『異邦人』を書いたアルベール・カミュなど、同時代の知識人たちがここに集い、芸術や哲学を語り合いました。
ボーヴォワールとサルトルは毎日ここで作業をするのが習慣で、カフェを「個人事務所」のように考えていたといいます。ある日、ボーヴォワールとの熱心な会話に夢中になったサルトルが、原稿をまるごとテーブルの上に置き忘れて帰ってしまいました。気のきくウェイターがそれを預かっていて、数時間後に慌てて戻ってきたサルトルに無事に返したといわれています。ピカソは、ここでナプキンの上に即興で絵を描くことがよくありました。あるウェイターが、なぜいつもナプキンに絵を描くのかと尋ねると、ピカソは「そのほうがコーヒーがおいしくなるからね!」と答えたと伝えられています。
今、レ・ドゥ・マゴを訪れると、芸術家たちが愛した席に、彼らの写真が額に入れて飾られています。芸術や文学がお好きなら、お気に入りの芸術家がよく座った席に座り、時代は違っても同じ空間にいるという感覚の中で、インスピレーションに思いを巡らせるのもすてきです。ここは、ホットチョコレートの「ショコラ・ショー(chocolat chaud)」、おいしいペストリー、定番のクロックムッシュが有名です。カフェに入りたい方は、ホットチョコレートを一杯味わってみてください。
次の場所は、来た方向にそのまま1分もかからず歩いたところにある「カフェ・ド・フロール」で、すぐ裏手にあります。


