パリのピカソ · 18/27

パリ · 絵画

ドラ・マール、強烈なミューズ

ピカソ美術館 · パリ, フランス

ピカソ美術館
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『泣く女』をはじめ、ピカソの代表作のうちの2点は、どちらも5番目のミューズ、ドラ・マールをモデルにした作品です。先ほど、マリー=テレーズがあまりにもおとなしく従順だったため、ピカソは正反対の性格の女性に惹かれた、という話をしましたが、その相手がドラ・マールでした。マリー=テレーズの写真と見比べてみると、顔立ちはより濃く、漂う雰囲気もずいぶん違います。ドラ・マールはピカソの母語であるスペイン語が流暢で、美術への理解も深かったため、二人には通じ合う部分がたくさんありました。何より職業が写真家という知識人で、ピカソを撮影した写真も数多く残っているほど、芸術について語り合える相手だったのです。

二人には、ちょっと変わったエピソードがあります。最初の出会いは、仲間のポールのお膳立てでした。ピカソが「もう新しいインスピレーションが湧かない。何か新しいものが必要だ」とこぼすと、ポールは「ほかの芸術家に会ってみては」とドラ・マールを紹介したのです。夕食の席となったレストランで、ドラ・マールはテーブルの上に手のひらと指をぱっと広げ、ピカソをじっと見つめたまま、突然小さなナイフを取り出しました。そして、広げた指の間を、ナイフの先で目にも留まらぬ速さで突き始めたのです。子どもの頃、学校でペンを使ってやった遊びを、ナイフでやるようなものです。やがて誤って指を刺し、血が流れても、彼女は平然とピカソを見つめ続けました。ピカソが「何をしているんだ」と声をかけたことから、二人の芸術家の会話が始まります。別れ際、ドラ・マールは「時間があるときに私のアトリエへいらして。あなたを撮影したいわ」と大胆に告げ、ピカソは彼女の血のついた手袋を持ち帰りながら「今日出会った私たちのことを覚えていたいから」と言ったそうです。こうして互いに惹かれ合った二人は、本格的に付き合うようになりました。

もうひとつ、こんな話もあります。ドラ・マールが飼っていた子犬が死んで悲しんでいたとき、ピカソは大きな贈り物をしたり、新しい子犬を買い与えたりするのではなく、ひと味違う方法で彼女を慰めました。ドラ・マールが子犬を思い出していそうなそぶりを見せるたび、そばにあった紙やティッシュを手に取り、ちぎって穴を開け、愛らしい子犬の顔をつくって手渡したのです。この紙の子犬の顔が、ピカソが慰めの気持ちを込めて作った作品です。一方、ドラ・マールを描いた肖像画は、色彩が強烈で、直線が多用されたものが目立ちます。絵を通じて、ピカソの心に刻まれた彼女の強烈な印象が伝わってきます。

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