パリ · 街歩き
ポンヌフ――パリで最も古い「新しい橋」
パリ · パリ, フランス
ポンヌフは、筆者がいちばん好きな夜景スポットのひとつです。夜のセーヌ川をはじめてきちんと目にしたのがこの橋で、初めて見たときはかなりの衝撃を受けました。
私たちはよく「ポンヌフ橋」と呼びますが、「ポン(pont)」はフランス語ですでに「橋」の意味なので、実は「ヌフ橋橋」と言っているようなものです。「ヌフ(neuf)」は、フランス語を少し知っている方には数字の9としておなじみですが、「新しい」という意味もあります。つまりポンヌフは「新しい橋」という名前の橋なのです。ところが皮肉なことに、この橋はパリ市内で最も古い橋。それ以前にも橋はいくつかありましたが、その上に家が建てられて住居として使われていて、通行のための橋として初めて造られたのがポンヌフでした。400年以上の歴史をもつ橋です。
こうした歴史を知らなくても、ポンヌフに見覚えがあるとしたら、それは映画『ポンヌフの恋人』のおかげでしょう。観た方は多くなくても、タイトルは聞いたことがあるはずです。ロマンチックな物語を想像させるタイトルですが、映画が始まって最初の5分はかなり生々しい場面が続きます。こうした場面があるのは、男性主人公を描くため。主人公はホームレスで、ヒロインもまたホームレスです。ホームレス同士の愛の物語であり、その暮らしをとてもリアルに描いているため、荒んだ場面が多くなっています。
映画の舞台は1989年。市庁舎やノートルダムでもお話ししたとおり、フランス革命が起きたのは1789年で、1989年はそのちょうど200年後にあたります。フランスでは革命を記念して、毎年7月14日の革命記念日に花火が上がり、今でもこの日にはエッフェル塔で花火大会が開かれます。200周年ともなれば準備にも力が入り、パリで最も古いこの「新しい橋」ポンヌフも改修工事に入りました。橋が封鎖されて工事が続くなか、ホームレスたちがここに集まってきます。そのひとり、男性主人公のアレックスは、ここで火を噴くパフォーマンスをしてお金を稼ぐ路上生活者でした。ある日、自分の場所に見知らぬ女性がいます。恋に破れ、視力まで失いつつある画家のミシェルでした。恋など考えたこともなかったアレックスは彼女に心を奪われますが、ミシェルは別の人を愛していて、二人の想いはすれ違います。やがて7月14日の革命記念日、盛大な花火が始まると、二人は花火を背に、工事中のポンヌフを駆けまわって激しく踊ります。すべてを投げ出し、何かから解き放たれたように踊り、笑うのです。その夜、アレックスは眠っているミシェルのそばにメモを残します。「もし愛する人がいるなら、明日その人に『空が白い』と言ってみて。それがもし僕なら、『雲は黒い』と答えるよ。そうすれば、僕たちはお互いの愛を確かめられる」。こうして二人は互いの愛を確かめ合いますが、多くの映画がそうであるように、やがて危機が訪れます。その先は、ぜひ映画でご確認ください。