パリの墓地めぐり · 11/12

パリ · 街歩き

エリック・ロメールとヌーヴェルヴァーグ

パリ · パリ, フランス

このスポットの音声解説はアプリで MuseCatアプリ アプリで聴く

モンパルナスに眠る次の人物は、フランスの映画監督エリック・ロメールです。ささやかな日常とくすぐったい恋愛をテーマにした映画だけを生涯撮り続け、その作品は初夏の風情を思い起こさせます。軽くなりがちな題材から、作品性に優れた名作だけを世に送り出した彼は、トリュフォーやゴダールと並ぶフランスのヌーヴェルヴァーグを代表する人物です。

ヌーヴェルヴァーグは、1950〜60年代に一世を風靡したフランスの映画運動で、フランス語で「新しい波」を意味します。簡単にいえば、従来の映画とは異なる道を行く反骨の映画で、サルトルやカミュの実存主義哲学に根ざしていると説明されます。この時期には、ストーリーの構成が緊密でなかったり、即興性が強かったり、さまざまな試みを行ったりする映画が数多く生まれました。ピントが揺れる、手持ちカメラで撮る、俳優がカメラをまっすぐ見つめる、台本にない場面が挟み込まれる、といった具合です。代表的な監督には、『大人は判ってくれない』『突然炎のごとく』のフランソワ・トリュフォー、『勝手にしやがれ』『気狂いピエロ』のジャン=リュック・ゴダール、『美しきセルジュ』『肉屋』のクロード・シャブロル、『狂気の愛』のジャック・リヴェットなどがいます。このなかから一人だけ選んでおすすめするのが難しいほど、ヌーヴェルヴァーグの映画はどれも見ごたえがあります。アナログでロマンチック、自由でダイナミックだった当時のパリの姿を新鮮な視点で捉えた作品を観れば、旅がいっそう豊かになるでしょう。

ロメールが他のヌーヴェルヴァーグの監督たちと違っていたのは、ヌーヴェルヴァーグの精神と少し距離を置いていた点です。実験精神を抑えたため、フィルモグラフィーは一貫した雰囲気を帯びています。2010年に亡くなったのち、モンパルナスに葬られました。自然光を美しく捉えた彼は「私の映画は天気の奴隷だ」と語ったことがあり、フランソワ・オゾン監督が最も尊敬する監督に挙げてオマージュを捧げたこともあります。同時代を生きたゴダールは、彼を自分の知る人のなかで最も教養ある人物と評しました。静かで誠実な家庭生活を送りながら、映画には三角関係がたびたび登場する、ユニークな監督です。

代表作には、1986年の『緑の光線』、1970年の『クレールの膝』、1967年の『コレクションする女』、1987年の『友だちの恋人』などがあります。複数の作品をひとつのテーマでまとめ、「六つの教訓物語」「時代劇」「喜劇と格言」「四季の物語」などに分類しているので、コレクションを通して観る楽しみもあります。

モンパルナスには、ご紹介しきれなかった人物も大勢眠っています。エミール・ゾラが、スパイ事件の無罪を新聞で訴えた「私は告発する」で知られるドレフュス、『女の一生』のギ・ド・モーパッサン、『ゴドーを待ちながら』を書いたアメリカの劇作家サミュエル・ベケット、実存主義哲学者サルトル、『死の舞踏』を作曲したカミーユ・サン=サーンス、そしてヌーヴェルヴァーグを代表するジャン=リュック・ゴダール監督の『勝手にしやがれ』のヒロイン、ジーン・セバーグもここにいます。これでは、一日で3つの墓地をすべて回るのは難しいと分かるでしょう。それほど見どころが多いのです。

音声ガイド

作品の前で、 再生するだけ。

アプリで聴く

無料ダウンロード · iPhone

iPhoneでスキャン

← マガジン一覧へ戻る

写真 © TourLive(MuseCat の運営会社)