パリ · 絵画
わずか6年の愛を描いた肖像、ティソ『物思いにふける女』
オルセー美術館 · パリ, フランス
ソファに寄りかかり、遠くを見つめる女性。穏やかでありながら、どこか孤独で陰のある表情を浮かべるこの絵の主人公は、画家ジェームズ・ティソが愛した女性、キャスリーンである。
キャスリーンは当時、英国社交界で噂の的となっていた人物だった。10代後半でインドにいたイギリス人官吏と結婚したが、まもなく離婚。その後、海軍将校と恋に落ち、子どもを産む。保守的なイギリス社会において「非嫡出子を持つ離婚女性」というレッテルは決して軽いものではなかっただろう。
しかしティソにとって、そうした世間の目は重要ではなかった。彼はキャスリーンに恋をし、ロンドンに戻った後、彼女と事実婚の形で共に暮らし始める。当時ティソは、イギリス上流階級の人々を優雅に描く画家として大変な人気を得ていたが、キャスリーンとの同居が知られると、上流階級の顧客たちは次々と離れていった。経済的には苦しくなったものの、ティソはのちに、この時期こそ自分の人生で最も幸せだった時だと振り返っている。金のために貴族を描く代わりに、自分が愛したキャスリーンを思う存分描くことができたからだ。
だが、その幸せも長くは続かなかった。キャスリーンが結核を患い、健康が急速に悪化。当時、結核は事実上治療が不可能な病だったため、ティソにできることは、彼女と過ごす残された時間を絵に記録することだけだった。この作品もまた、徐々に薄れていくキャスリーンの最後の時間を捉えたものである。ティソとキャスリーンが共に過ごした時間は、わずか6年。短くも、激しく燃えた時間だった。
この絵をじっと見つめていると、単なる肖像画を超えて、誰かを深く愛した画家の心がゆっくりとにじみ出てくるように感じられる。