パリ · 絵画
駅長の陰の功労、モネ『サン=ラザール駅』
オルセー美術館 · パリ, フランス
今も7路線が乗り入れるパリ交通の要所、サン=ラザール駅。モネが描いたこの絵の中の姿は、現在とはかなり異なる。安全柵は一つもなく、線路の上を人が歩いていてもごく自然で、石炭で走る機関車が吐き出す煙で駅の中はいつも白くかすんでいた。当時の鉄道駅はほとんどがこのような風景だった。
「光の画家」の異名にふさわしく、モネはこの曇った空気の中でも光を精緻に描き出した。天井の格子模様の構造物が光を受けて線路の床に同じ模様となって映り込み、右側の屋根の下の影になった部分の向こうには駅の外の明るい光が対比をなし、空間の奥行きを際立たせている。
モネにとって鉄道駅は単なる交通施設ではなかった。鉄道の登場で数日かかっていた旅程が数時間に短縮され、チューブ入り絵の具と携帯用画材が同時期に開発されたことで、画家たちはもはやアトリエに留まる必要がなくなった。鉄道と手軽な画材さえあれば、どこでも自分のアトリエになり得る時代、モネにとってサン=ラザール駅は、より広い世界へと続く入り口だった。
彼は田舎からパリに出てきてこの駅の近くに家を構え、ある日この駅を描こうと決意すると、一番上等な服に着替えて駅長を訪ね、協力を求めた。駅長はその堂々とした態度を気に入り快く応じただけでなく、蒸気を格好よく描きたいというモネの頼みに、石炭を一度にたくさん焚いてくれさえした。サン=ラザール駅を描いた作品は10点近くに及ぶほどモネはこの場所を頻繁に訪れ、そのたびに駅長は毎回快く協力した。今日私たちがこの連作を鑑賞できるのは、モネの才能だけでなく、名もなく埋もれた駅長の厚意のおかげでもある。