パリ · 絵画
天使を連れてきたら描いてやろう、リアリズムの誕生
オルセー美術館 · パリ, フランス
ここまで見てきた美術様式を振り返ると、フランス革命とナポレオン帝政の時代には新古典主義が、王政復古とルイ・フィリップの七月王政の時代にはロマン主義が流行した。そして1848年の二月革命を契機に登場したのがレアリスム(写実主義)である。「天使を描いてほしい」という依頼に対して「目の前に天使を連れてきたら描いてやろう」と答えたと伝わるほど、目に見えないものは描かず、目に見えるものだけを描いたのがレアリスムだ。
レアリスムを代表する画家であり、「レアリスム」という名称そのものを作り出した人物こそ、クールベである。ここでいうレアリスムは、目に見えるままを描くという意味であると同時に、当時の社会の姿を隠すことなくありのままに見せるという意味も含んでいる。
クールベは最初からこうした絵を描いていたわけではない。裕福な家庭に生まれ、何不自由なく育った彼の初期作品には、当時流行していたロマン主義の色合いが色濃く表れていた。そんな彼が変わるきっかけとなったのが、1848年の二月革命だった。このとき出会った人々を通じてフランス社会の現実を直接目の当たりにし、社会問題への関心を抱くようになる。自由と平等を重んじ、自然と誰もが共に豊かになる社会を志向する思想へと傾倒していった。
この頃からクールベはレアリスムの絵を描き始める。1871年には、労働者階級が樹立した自治政府パリ・コミューンで芸術委員会の議長を務めたこともある。しかしコミューンが失敗に終わると、ナポレオン像を破壊したという理由で投獄される。その後、自費で像を修復すると約束して釈放されたが、結局それだけの資金を用意できなかった彼はスイスへ亡命し、そこで生涯を閉じた。
クールベは当時の社会があえて隠そうとした現実の姿を、絵に描き続けた。批評家たちからの数々の批判にもかかわらず、最後まで自分の描きたい絵を貫き通し、これは後世の画家たちにも大きな影響を残すことになった。