パリ · 彫刻
濡れた衣が生んだ傑作、勝利の女神ニケ
サモトラケのニケ · パリ, フランス
この彫刻は1863年、ギリシャのサモトラケ島でフランスの調査団が発見したもので、「サモトラケのニケ」とも呼ばれる。制作されたのは紀元前200年頃、ヘレニズム時代だ。\n\nニケ像はヘレニズム彫刻の中でも最高傑作の一つとされる。自然で写実的、そして躍動感にあふれるというヘレニズム様式の特徴を、完璧なまでに体現しているからだ。特にへそ周辺、水に濡れたかのように体にぴったりと貼りつく衣の表現は、生き生きとした写実性の極みといえる。\n\nこの作品にはもう一つ「勝利の女神ニケ」という名前がある。ギリシャ神話のニケはローマ神話では「ウィクトーリア」と呼ばれ、これはすなわち「勝利」を意味する。スポーツブランド「ナイキ」の名も、このニケを英語読みしたものだ。昔の人々は戦に出る際、船の舳先にニケ像を据えて戦勝を祈願しており、当時の硬貨にも舳先で勝利のラッパを吹くニケの姿が刻まれている。\n\nただし、このニケ像は舳先用ではなく、神殿に奉納するために作られたものと推測されている。発見された場所が海辺ではなく、神々の神殿があった山だったためだ。発見当時、この彫刻は百以上もの破片に砕けた状態で、これらを一つひとつ探し出しつなぎ合わせて、今の姿に復元された。頭部と両腕はついに見つからず今も欠けたままで、翼も片方しか発見されず、もう片方は見つかった翼を模して石膏で新たに作り、つなぎ合わせたものだ。素材や制作時期が異なるため、よく見ると新しく作られた方がやや白く見え、肉眼でも見分けがつく。\n\nニケ像は長い間、多くの人々にインスピレーションを与え続けてきた。ナイキやホンダのオートバイのロゴにはニケの翼があしらわれており、映画『タイタニック』で主人公二人が舳先で両腕を広げる名シーンも、この彫像から着想を得たと言われている。