パリ · 絵画
友人たちと描いた奇跡、ヴェロネーゼの《カナの婚宴》
カナの婚宴 · パリ, フランス
ルネサンス後期、芸術の中心地はフィレンツェやローマを越えてヴェネツィアへと移っていく。ヴェネツィア派の画家ヴェロネーゼが描いた《カナの婚宴》は、その時代を代表する作品であり、登場人物たちの表情や雰囲気がより生き生きと表現されたストーリーテリングが際立つ。\n\nルーヴル最大の絵画であるこの作品は、もともとヴェネツィアのサン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂にあったが、ナポレオンがイタリア遠征の際にフランスへ持ち帰ったものだ。絵はイエスの最初の奇跡、すなわちカナの村の婚宴で水をぶどう酒に変えた出来事を描いている。新郎新婦が用意したぶどう酒が尽きてしまうと、マリアがイエスに助けを求め、イエスの言葉どおり甕に水を満たした召使いがそれを注ぐと、水はぶどう酒に変わったという物語だ。絵の右下では、召使いが甕を傾けて赤いぶどう酒を注いでおり、周囲の人物たちがその驚くべき光景に反応する様子が生き生きと描かれている。\n\n絵の中央に座っているのは新郎新婦ではなく、イエスだ。つまりこの絵の本当の主役はイエスなのである。イエスとマリア、そして弟子たちは聖書の時代の衣装で描かれているのに対し、それ以外の背景や人物たちは、画家が活動していた当時のヴェネツィアの華やかな姿で表現されている。もとは小さな田舎町だったカナが、これほど豪華に描かれている理由だ。\n\nヴェロネーゼは聖書に記されていない場面も描き加えた。楽器を演奏する人物たちがそれで、ここに自分自身と画家仲間の顔を描き込んでいる。白い衣をまとった人物がヴェロネーゼ本人であり、その傍らにはバッサーノ、ティントレット、ティツィアーノがそれぞれ楽器を演奏する姿で登場する。宗教画に画家自身の顔を描き込むことができたのは、当時ヴェネツィアが他の地域に比べて宗教的な制約から比較的自由な芸術的環境にあったためだ。\n\n肝心の新郎新婦は左隅に静かに座っている。最も華やかな衣装をまといながら、最も浮かない表情を浮かべているのがその二人で、用意した酒が尽きてしまうことを気にかけている様子だ。興味深いことに、花嫁のそばでしつこく言い寄っているように描かれたひげ面の男は、フランス王フランソワ1世だと推測されている。イタリアを相手に戦争を仕掛け、ダ・ヴィンチをフランスへ連れ去った人物だったこともあり、イタリア人画家であったヴェロネーゼが彼を皮肉って描き込んだという解釈がある。\n\n絵の中には、イエスの死を暗示する象徴もいくつか隠されている。イエスの頭上でわずかに傾いた黒い水差しは彼が流す血を、その下で肉を切る人物たちは「子羊」として象徴されるイエスの犠牲を、楽師たちの間のテーブルに置かれた砂時計は彼に残された時間がわずかであることを暗示している。\n\n一方、ナポレオンが略奪した数々の作品のうち、イタリアは後に彫刻家アントニオ・カノーヴァを筆頭に交渉団を送り、かなりの数を取り戻した。しかしこの作品だけは、ルーヴル初代館長ドノンが絵を隠して返還を免れさせ、そのおかげで今日までルーヴルに残ることとなった。