パリ · 絵画
『臨終のカミーユ』
ジヴェルニー · パリ, フランス
詳細ページの絵を探してみましょう。華やかな花の絵のなかに、憂いを帯びた青みがかった作品があります。『臨終のカミーユ』です。初めて目にすると、ぞくりとするかもしれません。愛する妻が世を去る瞬間を、そばで絵に描いたからです。カミーユと出会ったきっかけも、絵のモデルとして描くためでしたから、本当に愛していたというより、ミューズとして好きだったのではないか、という疑問が浮かぶかもしれませんし、病に伏したカミーユの顔に、悲しみよりも光を見いだしたのではないか、と思えてもきます。
けれども、カミーユの死後にモネが知人に宛てた手紙を読むと、単に被写体として愛していたわけではなかったことがわかります。手紙の一節はこうです。「私の哀れな妻が、今朝10時30分に亡くなりました。ひとり残されたこの気持ちは、本当に悲痛です。先生にひとつお願いしてもよろしいでしょうか。この手紙に借用証書を同封しますので、私が質屋に預けているペンダントのネックレスを受け出していただけないでしょうか。そのネックレスは、妻が持っていた唯一の思い出の品です。彼女が旅立つ前に、ぜひそのネックレスを彼女の首にかけてあげたいのです」。愛する妻に贅沢をさせてあげられなかった悲しみと愛情が伝わってくる言葉です。
色彩も、モネが普段あまり使わない、暗く沈んだ青です。モネの憂鬱な感情が、そのまま伝わってきます。もしかするとモネは、愛する妻の死をキャンバスに収めることで、その姿を目と絵に残しておきたかったのかもしれません。