パリ · 建築
イエナ橋と、エッフェル塔を売った詐欺師
エッフェル塔 · パリ, フランス
イエナ橋の入口に立つと、両側にセーヌ川が流れ、正面にはエッフェル塔がそびえ立っています。エッフェル塔を間近ではっきりと写真に収められるため、撮影する人も、撮ってあげる人も大勢います。塔を真ん中に収めようと車道の真ん中に立つ人もいますが、安全上おすすめできません。人出が多い分、スリにも常に注意してください。まずは音声を止めて写真を楽しみ、その後に続きをお聞きください。
橋の右端には、回転木馬が見えます。次の目的地であるカルーセルまで、歩きながらこの音声をお聞きください。イエナ橋は、エッフェル塔とトロカデロ庭園の間に架かる長さ140メートル、幅35メートルの橋で、1806年にフランスが戦争で収めた勝利を記念して造られました。橋の両端には、それぞれ2体ずつ彫像が据えられています。1848年から1853年にかけて制作されたもので、馬とともに堂々と立つガリア人、ローマ人、ギリシャ人、アラブ人の戦士を表しているそうです。
歩きながら、エッフェル塔にまつわる面白いお話をひとつ。現在はパリ市の所有であるエッフェル塔を、かつてある詐欺師がスクラップとして売りつけたことがあります。1925年、ヴィクトール・ルスティグという人物が、なんと2度にわたって大胆な詐欺を働きました。パリの有名な鉄鋼会社5社に手紙を送り、エッフェル塔を解体する予定なので、その鉄を独占的に買い取れる入札に特別に参加させてあげる、と持ちかけたのです。
彼は5つ星ホテルのクリヨンで業者たちと会い、維持費がかさみすぎるため解体が決まったという趣旨の大がかりなプレゼンテーションを行い、自分は政府の代表として極秘で解体作業を任されていると名乗りました。鉄鋼会社の面々が秘密を守ると約束すると、ルスティグは豪華なランチをふるまい、リムジンでエッフェル塔を見学させてから帰しました。次に、その中から最もだまされやすそうな人物を選び、自分はお金に困っている公務員なので、少し賄賂をくれれば落札できるよう取り計らうと伝え、入札費用に加えて賄賂まで受け取ったといいます。解体が行われないため、だまされた業者は市当局に事情を尋ねに行きましたが、笑われて追い返されました。あまりに恥ずかしく、誰にもこの件を打ち明けなかったそうです。
オーストリアのウィーンへ逃げていたルスティグは、これを知るとパリに舞い戻り、同じ手口でもう一度詐欺を働きました。このときは、買い手候補のひとりが不審に思って調べた結果、詐欺だと分かって警察に通報しました。ルスティグは捕まらずにアメリカへ逃げ、偽札を作って暮らしていましたが、最終的に逮捕され、アルカトラズ刑務所に収監されたということです。
近づくほどに、エッフェル塔はいっそう雄大に感じられます。塔をよく見ると、1階の展望台の下にあるアーチの上に、フランスの著名な科学者、技術者、数学者の名前が刻まれています。4つの面すべてに18人ずつ、合計72人。いずれもエッフェル自身が選んだ人物です。芸術家たちが塔の建設に反対したことを受けて、科学への関心を高めるために名前を刻んだといわれています。金色に輝く名前は、理由は定かではありませんが、20世紀初頭にペンキで塗りつぶされ、1987年に復元されて、今のように見られるようになりました。代表的な名前には、高級時計ブランドでも知られる物理学者で時計職人のブレゲ、フーコーの振り子で有名な物理学者フーコー、天体力学のラグランジュ・ポイントで知られる数学者・天文学者のラグランジュなどがいます。