パリ · 建築
シャン・ド・マルス公園とエッフェル塔の夜景
エッフェル塔 · パリ, フランス
シャン・ド・マルスという名は、ギリシャ神話の戦いの神マルスに由来します。エッフェル塔と陸軍士官学校(エコール・ミリテール)の間に広がるこの緑地は、かつてフランス軍が行進訓練をしていた場所です。青々とした芝生とエッフェル塔が調和し、公園とともに塔の全体を収められるので、爽やかで若々しい雰囲気の写真になります。ゆったりとくつろいだ雰囲気の写真がよく似合う場所です。パリジャンがバゲットサンドとスーパーで買った手頃なワインを片手に、寝そべって本を読んだりおしゃべりしたりして、午後や週末を過ごすピクニックスポットとして有名で、野外のイベントもたびたび開かれます。
夜のエッフェル塔は、昼とはまったく違う魅力をもっています。夜景を楽しむなら、セーヌ川沿いがおすすめで、オルセー美術館を過ぎたあたりを歩きながらエッフェル塔を眺める時間はとくに格別です。バトー・ムーシュのセーヌ川クルーズに乗って、きらめく夜のエッフェル塔を眺めるのもおすすめです。ボートツアーでは音声ガイドが流れるので、解説に邪魔されたくない場合は、ノイズキャンセリングヘッドホンやカナル型イヤホンを持っていくとよいでしょう。
エッフェル塔に初めて明かりがともったのは1958年で、1290台のプロジェクターが使われました。1985年12月31日には、電気技師で照明エンジニアのピエール・ビドーが、336台のプロジェクターと黄色い高圧ナトリウムランプを使った照明装置を披露しました。1999年12月31日、新千年紀を迎えるにあたり、塔の頂上には、360度回転しながら80キロメートル先まで光を放つ灯台のような照明が設置されました。2004年には、日没後10分ほどかけて点灯するセンサー式の600ワットのプロジェクターに入れ替えられ、電力使用量が約40%減りました。2007年にも336個の電球が交換されています。照明は定期的に点検・交換され、塔の美しい外観の保存と、夜間運営の安全に役立てられています。
エッフェル塔は、日没後から午前1時まで(夏は午前2時まで)ライトアップされ、毎正時に5分間、塔が全身を震わせるように照明がきらめく特別な時間があります。総延長40キロメートルのケーブルでつながれた2万個の電球が一斉にまたたく光景は、まぶしく、息をのむほどの美しさです。この電球の設置には、プロの登山家25人が5か月間動員され、安全ネットだけで1万平方メートルにおよぶ大規模な作業でした。パリ市内は間接照明が使われているため、夜景がまぶしすぎず、やわらかく輝きます。そのため、夜になってエッフェル塔に明かりがともると、塔の照明がひときわ引き立ちます。
普段は色をつけない、ダイヤモンドのようなきらめきですが、フランスがEU議長国だったときには青い光に輝きました。この光景は、塔が見える場所ならどこでも美しく、モンパルナス・タワーの展望台から眺めるのも、メトロのパッシー駅で降りてセーヌの川岸に座って眺めるのもおすすめです。照明が完全に消えた深夜の塔はあまり美しくない、という人もいますが、静かな夜に闇の中で眠る、とげのある影のような姿も、また魅力的です。ただし、ひとつ注意点があります。昼のエッフェル塔は自由に撮影して投稿できますが、夜の照明設備には別に著作権があるため、個人で撮影するのは自由でも、ブログや個人のホームページに掲載する際は、営利目的ではないことを明記する必要があるそうです。
特別な日を記念して、色とりどりの照明を塔に当てるイベントも、ときどき行われます。そんな場面に出会えたらとても幸運ですので、見逃さずに撮影してみてください。2007年にフランスがラグビーワールドカップを開催した際は緑と黄色の照明が塔を彩りました。2017年にネイマールがパリ・サンジェルマンに移籍した際には、クラブカラーの青と赤の照明で入団を祝ったこともあります。
エッフェル塔を嫌った有名人もいます。皮肉にも、作家のモーパッサンです。モーパッサンはパリに住んでいましたが、エッフェル塔が嫌でたまらずパリを離れ、シチリア旅行のあとに書いた『放浪の生活』という本で、その理由を述べたといわれています。有名な逸話も伝わっています。パリに住んでいたころ、昼食をいつもエッフェル塔の中のレストランでとっていたというのです。そうすれば食事中に塔を見なくて済むから、と語ったそうです。亡くなったあとは、エッフェル塔からそう遠くないモンパルナス墓地に埋葬されましたが、幸いそこからは塔が見えません。モンソー公園に建てられたモーパッサンの像も、エッフェル塔に背を向けて立っているそうです。
心理学には「エッフェル塔効果」という用語があります。ある対象に何度も接し、長く付き合ううちに、自然と好意が生まれる現象のことで、街の歴史とともに歩み、パリジャンに愛される象徴となったエッフェル塔に由来する言葉です。数多くの反対に耐え抜いたエッフェル塔が、あらためて立派に思えます。
音声ガイドとともにめぐるツアーコースは、ここまでです。続いて、ひとりで回れるスナップ撮影コースをご紹介します。



