パリ · 彫刻
美しすぎて地獄に入れなかった彫刻、『接吻』
ロダン美術館 · パリ, フランス
『接吻』はロダンの代表作の一つで、彫刻に描かれた二人の人物はダンテの『神曲』に登場するパオロとフランチェスカだ。リミニの領主と結婚した若きフランチェスカは、夫の弟パオロと恋に落ち、二人は結局越えてはならない一線を越えてしまう。ロダンは、こうして互いを愛し合う二人の姿を彫刻として表現した。
もともとこの彫刻は『地獄の門』を飾る主要作品の一つとして構想されていた。ところが出来上がった彫刻があまりにも美しく、『地獄の門』が求めていた雰囲気にそぐわなかったため、結局別の彫刻に差し替えられた。とはいえ『接吻』というモチーフ自体を完全に手放すのは惜しかったのか、ロダンはやや異なるバージョンを小さく作り、『地獄の門』の右下部分に配置した。どちらの作品も男女が口づけを交わす姿は同じだが、ポーズや雰囲気にはそれぞれ違いが見られる。
この彫刻はロダン特有の「ノン・フィニート(non-finito)」技法がよく表れた作品でもある。ノン・フィニートはイタリア語で「未完成」を意味し、二人の男女が腰掛けている岩の部分の荒々しい質感は、まるで彫りかけのような印象を与える。また、二人の顔と胴体は精巧に仕上げられている一方、腕と脚は比較的仕上げが粗い。これはロダンが人物の感情と主要な動きに集中し、重要度の低い部分はあえて緩やかに残したためである。
ロダンはこの作品を1887年に公開し、『接吻』という名で呼ばれながら大きな成功を収めた。この彫刻はイタリア北部カッラーラ地方産の高級大理石、カッラーラ大理石で作られている。バチカンのピエタ、ローマのパンテオン、ロンドンのマーブル・アーチといった世界的な傑作がこのカッラーラ大理石で作られたほど、品質に定評のある素材だ。


