パリ · 絵画
ピカソとブラック、キュビスムの盟友
ピカソ美術館 · パリ, フランス
《ギターを持つ男》は、ピカソが1911年に描いた作品です。題名は「ギターを持つ男」ですが、人の形はかろうじて見分けられるものの、ギターがどこにあるのか、上半身がどこからどこまでなのかは、判別しにくくなっています。幾何学的な図形、ゆがんだ顔、体、背景が入り混じり、先ほど見たキュビスムよりも、はるかに対象が見分けにくくなっています。対象をいっそう分析的に細かく分解しているのです。
この時期、ピカソと一緒に制作していた仲間がいます。ピカソの作品と並べて見ると、この二つの絵は実によく似ています。最初の一枚がピカソの作品で、もう一枚は仲間のジョルジュ・ブラックの作品です。当時も、二人の作品は見分けがつかないほど似ていたといわれています。
ブラックは1907年、詩人ギヨーム・アポリネールの紹介で、パリで次第に名を上げつつあったピカソと出会い、翌年にはパリの若き画商ダニエル=アンリ・カーンワイラーがブラックの作品を集めて展覧会を開きました。意気投合した二人は、1909年頃から1914年頃まで、いつも一緒に制作しながらキュビスムを発展させます。二次元の平面の上に、三次元の立体的な対象をどう表現できるか、絶えず実験を重ねました。
ジョルジュ・ブラックは、ピカソの陰に隠れがちですが、当時は活躍していた芸術家でした。ピカソとともにキュビスムを創始し、発展させただけでなく、何よりも「パピエ・コレ」という技法を最初に試みた人物です。パピエ・コレとは、よく知られたコラージュ、つまり複数の紙を切り抜いて一か所に貼り合わせ、新しい作品をつくる技法を、フランス語でこう呼ぶものです。ブラックはのちに、紙だけでなく砂やおがくずなども作品に貼りつけるようになりました。一般に絵画の範疇には入らない素材をキャンバスに取り入れたのです。彼に影響を受けたピカソも、コラージュの技法を用いた作品を残しており、それは次の作品でご覧いただきます。
かつてこれほど似た作品を生み出し、ともに制作した二人でしたが、1914年に第一次世界大戦が始まると道は分かれます。ブラックはフランス人だったため戦地に赴き、スペイン人のピカソは戦争に行きませんでした。除隊後、ブラックは静物画により力を注ぎ、ピカソはそれまでに築いた名声を土台に自らの芸術を続けるなかで、二人は次第に疎遠になっていきます。《ギターを持つ男》とともに、ピカソの盟友ジョルジュ・ブラックを覚えておいていただければと思います。