パリの劇場と公演 · 7/16

パリ · 街歩き

フランス人に愛されるミュージカル『スタマニア』

パリ · パリ, フランス

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フランスで最も重要なミュージカルを挙げるなら、間違いなく『スタマニア(Starmania)』でしょう。ディストピア的な未来を舞台にしたこのロックミュージカルは、華やかさや成功、スターダムへの憧れの裏に潜む人間の内面の空虚さを、批評的に、そして哀愁を込めて描き出します。名声を得るためなら何でもしようとする人々の物語で、タイトルも「スター」と「マニア」を合わせたものです。

『スタマニア』は1979年に初演され、この作品をきっかけに、フランスでミュージカルが広く愛されるようになりました。作詞を手がけたのはリュック・プラモンドン。彼は『ノートルダム・ド・パリ』にも参加しています。代表曲「ビジネスマンのブルース(Le Blues du businessman)」は、一見華やかな自分の人生への空虚感と後悔を打ち明ける一曲で、多くの共感を集めました。耳に残る歌詞とメロディのおかげで英語でもリメイクされ、コンセプトアルバムとして制作されたこともあります。『ライオン・キング』の作詞家として知られるティム・ライスが英語版の翻案を担当し、タイトルは『タイクーン(Tycoon)』。セリーヌ・ディオンら著名なアーティストも参加し、作品を海外に広めるきっかけとなりましたが、英語圏で上演されたことはないそうです。

2022年のリバイバル公演で演出を務めたのは、トマ・ジョリー。この舞台でモリエール賞の作品賞、ビジュアル賞、音響賞を受賞しました。トマ・ジョリーは、2024年パリ五輪の芸術監督として、フランスならではの開会式で話題を集めた人物でもあります。

フランスのミュージカルには、独特の魅力があります。物語を軸に進むブロードウェイのミュージカルとは異なり、音楽で登場人物の感情とその深みを表現することに重きを置いているのです。台詞をほとんど使わず、ほぼ音楽だけで物語を紡ぐ「ソングスルー」形式の作品が多いのは、フランスのミュージカルがオペレッタを土台に発展してきたからです。『レ・ミゼラブル』も『ノートルダム・ド・パリ』も、ソングスルー形式のミュージカルです。歌詞は一編の詩のように比喩に富んでいて、あらすじを知らずに観ると、ストーリーを追いにくいこともあります。物語の筋や流れを大切にする方なら、「ミュージカルというより、コンサートみたい」と感じるかもしれません。舞台は比較的シンプルで抽象的、実験的で、振付にもアクロバティックでダイナミックなパフォーマンスがよく登場します。

こうした特徴を「フランスのミュージカルならではの色」と受け止めると、また違った楽しさや感動に出会えます。ぜひ心を開いて、ときには普段の観劇スタイルを少し変えて、新しい視点で味わってみてください。

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