パリ · 街歩き
バトー・ラヴォワール――ピカソと芸術家たちの住処
パリ · パリ, フランス
「愛してるの壁」を後にして路地をほんの少し上ると、バトー・ラヴォワール(洗濯船)が見えてきます。ユニークな名前のこの建物は、貧しい芸術家たちが集まって暮らした場所です。最も有名なのはピカソで、ここで『アヴィニョンの娘たち』を描いたことでとりわけ知られています。作品はニューヨークにあるためパリでは見られませんが、絵が生まれた場所を訪ねることはできます。
ピカソがここに住んでいた頃は、ストーブをたくこともできないほど貧しかったといいます。それでも情熱的に絵を描き続け、作品を売るための努力も惜しまなかったそうです。ここで偶然出会ったフェルナンド・オリヴィエと暮らし、この時期の作品にはフェルナンドがモデルとしてたびたび登場します。ピカソのほかにも、モディリアーニ、ジョルジュ・ブラック、アンリ・マティスといった画家たちがこの建物に住み、制作に励みました。
今では名前を聞けば誰もが知る芸術家たちが通り過ぎた場所ですが、彼らが集まった理由はたったひとつ。今にも崩れそうな粗末なバラック小屋だったからです。貧しかった彼らには、制作のための空間が必要でした。
「洗濯船」という名前は、当時セーヌ川に浮かんでいた洗濯用の船と建物の姿が似ていたことに由来します。名付け親は詩人のマックス・ジャコブ。ピカソと親しく、キュビスム文学の誕生に大きく貢献した人物です。画家だけでなく音楽家や作家も共に暮らした場所だけあって、名前までもが文学的です。
もとの建物は火事で焼失し、現在の建物は後に再建されたものです。内部の見学はできず外観のみですが、モンマルトル散策ではぜひ立ち寄りたいスポットです。