オルセー美術館 · 81/82

パリ · 絵画

大きな鼻の陰に隠れた心、ロートレック『シラノ役のコクラン』

オルセー美術館 · パリ, フランス

オルセー美術館
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舞台の上で剣を振りかざす男の顔。そこでまず目に飛び込んでくるのは、ひときわ大きな鼻だ。この人物はフランスの名優コンスタン・コクランで、彼が演じた戯曲『シラノ・ド・ベルジュラック』の一場面を描いた絵である。

シラノは優れた剣術と機知に富んだ話術を持ちながらも、自分の大きな鼻のせいで生涯、想いを直接打ち明けられない人物だ。彼は愛する女性に自分の言葉で気持ちを伝える代わりに、容姿端麗な友人を立て、その友人の名で恋文をしたためる。表向きは堂々として陽気に見えるが、内心では容姿のために拒まれることを恐れている人物なのだ。

ロートレックがこの場面に強く惹かれたのには理由がある。ロートレック自身も幼い頃の事故で両脚の成長が止まり、生涯小柄で不自由な体のまま生きなければならなかった。表向きはパリの社交界や歓楽街を華やかに飛び回る画家だったが、内面には容姿ゆえの孤独と疎外感を抱えていた。シラノの隠された傷と、ロートレック自身の傷が重なって見えたのである。

だからこの絵は、単に戯曲の一場面を写し取った記録画ではない。華やかな弁舌と勇敢さの陰に隠された、見た目のせいで愛されないのではと恐れる一人の人間の心を、ロートレックは誰よりもよく理解していた。その共感が、この絵の中のコクランの表情にそのまま宿っている。

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