パリ · 絵画
粗いキャンバスの上の柔らかな筆致、ドガ『アイロンをかける女性たち』
オルセー美術館 · パリ, フランス
パリのとあるランドリー店を舞台に描かれたこの絵。今でこそランドリー店は徐々に姿を消しつつあるが、19世紀後半のパリとその近郊では、人口の5分の1、多いときには3分の1がランドリー産業に従事していたほど、当時としては成長著しい分野だった。それだけに洗濯をする女性たちの姿はパリの街角でよく見かけられ、ドガのほかにも多くの画家がこの題材を好んで描いた。
絵の中の二人の女性のうち、右側の女性は懸命にアイロンをかけており、左側の女性はあくびをしながら休んでいて、片手にはワインボトルを一本持っている。ドガは懸命に働く人物を硬直し緊張した姿勢で、休んでいる人物は体の力が抜けた気だるい姿勢でそれぞれ描き分けた。身体の特徴を正確に捉えていたからこそ可能だった表現で、特に働く女性の縮こまった肩の描写が際立っている。
この絵が描かれたキャンバス自体にも注目する価値がある。絵の具の合間から見える茶色い布地は、加工を経て白くなる前の段階の粗いキャンバスだ。ドガはあえてこの未精製のキャンバスを用いたが、一見すると労働者たちの過酷な現実を強調しようとした意図のようにも思えるが、実際は違う。むしろこの粗い質感が、洗濯女たちが身につけたパステルカラーの衣服を一層生き生きと際立たせており、繊細な筆致で柔らかく表現された女性たちの体は、粗いキャンバスと対比されることで、その柔らかさが一段と際立っているのだ。
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