パリ · 街歩き
ポンピドゥー・センター
マレ地区 · パリ, フランス
フルーの店舗を過ぎて、そのまま少し歩くと、マレ地区ツアーの最後のスポット、ポンピドゥー・センター(Centre Pompidou)に着きます。厳密にいえば、行政区分上はマレ地区に含まれません。けれども、マレ地区の境界に位置することで、フランスの過去と現在をつなぐ大切な場所になっています。これまで巡ってきたマレ地区が、伝統と歴史の保存に力を注ぐ姿で迎えてくれたのに対し、ポンピドゥー・センターは、今を生きるフランス文化を生み出す源であり、パリの現代的なビジョンと感性を積極的に発信する現代美術のメッカです。パリの文化芸術のレベルをはっきりと示す、記念碑的な建築といえるでしょう。
ジョルジュ・ポンピドゥー大統領は、フランスが19世紀まで享受してきた世界の芸術の中心地という地位をあらためて確かなものにし、あの時代を再び輝かせようと、パリの歴史的中心である4区のボブール広場に複合文化センターを建てることを決めました。ボブールとは「美しい村」という意味で、パリジャンはポンピドゥー・センターを「ボブール」と呼ぶこともあります。つまり「ボブールで会おう」は、「ポンピドゥー・センターで会おう」という意味なのです。
白、赤、青、黄色の配管や構造がすべて外に露出し、まるで工事中のように見える巨大な建物が見えますか? これがポンピドゥー・センターです。1977年1月に開館したこの建物は、数十年前のデザインとは思えないほど現代的です。技術を過度に強調したような外観は、建設当時、パリにふさわしくないと批判を浴びました。市民からは「巨大な精油工場がパリの歴史地区の真ん中にできようとしている」と反対の声も上がりました。しかし、心配をよそに、ここは世界的に重要な現代美術館として、パリ市民はもちろん世界中から訪れる人を集める複合文化芸術センターとして定着しました。
この複雑で難解に見える建物を理解するキーワードは「空っぽ」です。どんな形や大きさの芸術作品でも受け入れられる、柔軟な内部空間をつくるために、建物を支え、構成する構造や機能の設備は、すべて外に出す設計になっています。内部をがらんと空けて、自在に変えられる空間として開放するために、外側に配置された設備や管には、産業用の色分けに従って色が塗られています。構造体は白、移動設備は赤、上下水道管は緑、電気は黄色、冷暖房設備と換気ダクトはそれぞれ青と白です。マレ地区の方向から見えるのは、建物の裏側で、こちらには図書館の入口があります。
もう少し歩いて、左手に見えるストラヴィンスキーの噴水を過ぎると、ポンピドゥー・センターを正面から眺められます。建物の前に広がる、大きく空けられた広場が見えますか? この広場は、パリ市民の都会の憩いの場であるだけでなく、センター内部に展示しきれないストリートアートが置かれ、建物を舞台の背景にして、パフォーマンスやアートが繰り広げられる、拡張された空間でもあります。この広場は、躍動感と交流性を兼ね備え、センター建設当時に挙がっていた、伝統と現代の断絶や不調和といった懸念を、きれいに吹き飛ばしました。
内部の「空白」、そして建物前の広場の「空白」。1971年、パリではポンピドゥー・センター建設のための国際設計コンペが行われました。当時無名だった30代のイタリア人建築家レンゾ・ピアノと、イギリス人建築家リチャード・ロジャースの案が選ばれました。敷地の半分以上を思い切って空けて、公共空間の広場として使ったこと、そして内部を空っぽにすることで、型にはまった建築ではなく、変化の可能性を提供することが、選ばれた最大の理由でした。
国立近代美術館、公共情報図書館、産業創造センター、音響音楽研究所、文化省、映画館、劇場、書店などで構成されるこの施設は、「ポンピドゥー美術館」ではなく「ポンピドゥー・センター」と名づけられたことからもわかるように、彫刻や絵画を展示するだけの場所ではない、複合文化スペースです。写真、映画、建築、ニューメディア、インスタレーション、グラフィックデザイン、工芸、家具、インダストリアルデザインまで、20世紀初頭から21世紀にかけての近現代美術を網羅した作品に出会えます。



