オルセー美術館 · 67/82

パリ · 絵画

視線まで計算された構図、ルノワール『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』

オルセー美術館 · パリ, フランス

オルセー美術館
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どこかで一度は目にしたことがあるような、見覚えのある絵だ。舞台はモンマルトルにあるムーラン・ド・ラ・ギャレット。もともとはパンを作る風車小屋だったが、当時ダンスホールに改装された。今で言えば、工場を改造して作った流行りのカフェのようなものだ。ダンスホールに生まれ変わった後、この場所は瞬く間に人気を集め、当時のパリの有名人たちが好んで訪れる場所となった。

絵の中にも当時有名だった人物たちが何人も登場する。手前のテーブルで黒い帽子とドレスを身につけている女性は、ルノワールのミューズと呼ばれた女優ジャンヌ・サマリーで、ルノワールの複数の絵にたびたび登場する人物なので覚えておく価値がある。その隣で黒いシルクハットをかぶりパイプをくわえている男性は、ルノワールの別の絵『ブランコ』にも登場するノルベール・ゴヌーだ。このように絵には当時の有名人たちがあちこちに配置されており、これは印象派が当時の時代の姿を生き生きと捉えようとした特徴をよく示している。経済成長によって労働者階級の暮らしにもある程度の余裕が生まれ、日曜日になると洒落た服を着てこうしたダンスホールに集まり、踊り、酒を飲みながら時間を過ごすのが当時のありふれた光景だった。

光の表現も注目すべき点だ。木々の合間から降り注ぐ光が画面のあちこちに繊細に描き込まれており、こうした光の活用は印象派の代表的な特徴の一つである。

構図もまた緻密に計算されている。画面全体には人々がぎっしりと描き込まれているが、左側で踊る男女の周りだけは人数が少なく、二人だけが別に離れているような印象を与える。ルノワールはこのように意図的に空間を配置することで、絵を見る人の視線が画面の手前と左側の両方を自然に行き来するよう仕向けた。ただ描いたのではなく、鑑賞者の視線までも計算して設計された絵だというわけだ。

ムーラン・ド・ラ・ギャレットは今でもモンマルトルに行けば出会うことができる。もはやダンスホールではないが、小さなレストランとして営業しており、建物の前では写真を撮る人も多い。モンマルトルを訪れるなら、ぜひ立ち寄ってみる価値のある場所だ。

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