パリ · 街歩き
ロジエ通り4番地、サン・ポール浴場
マレ地区 · パリ, フランス
ロジエ通りに入ってすぐ右手、4番地には、スウェーデン発のブランド「COS」の店舗があります。この建物はかつて公衆浴場で、建物の上部には今も「Hammam St. Paul」、つまりサン・ポール浴場の文字が残っています。
19世紀末まで、パリの上下水道が整っていなかったというお話を覚えていますか。歴史地区を歩いていると、通りに悪臭や汚物があふれていたパリの暗い過去に、つい触れたくなります。20世紀より前のパリでは、浴室のある家はごくわずかで、自宅に浴室を持つことは大変な富と贅沢の象徴でした。では、人々はどこで体を洗っていたのでしょうか。街のあちこちにある噴水や水飲み場、あるいはセーヌ川を使っていたのです。
トイレ事情はさらに深刻でした。おまるの中身を窓から投げ捨てるのは当たり前で、高級住宅のトイレでさえ、建物に開けた穴から汚物が通りにたまり、放置されるありさまでした。狭い路地に汚物があふれるパリの姿が想像できますか。汚物を避けるためにハイヒールが、悪臭をごまかすために香水が発達したと言われるのも、うなずけます。
公衆衛生の深刻さに気づいたフランスは、各地に公衆トイレを設けるとともに、労働者の多い地区から順に公共のシャワー室や浴場を整備し始めました。サン・ポール浴場は、19世紀末にマレ地区に誕生した公衆浴場です。パリには、19世紀に作られたシャワー室や浴場の建物が今も数多く残っています。ロジエ通りのアパレル店のように、ショップやレストラン、展示スペースなどに姿を変えて生まれ変わった建物もあれば、今も公衆衛生施設として営業を続けている場所もあります。





