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地獄の門

ロダン ロダン美術館 庭園

地獄の門 — ロダン

今ご覧いただいている作品は、ロダンの彫刻の中でも最も代表的な作品の一つ、《地獄の門》です。

ロダンは四十歳の年に、フランス政府から、ルーヴル美術館のすぐ隣に建設される予定だった装飾美術館の入口扉を制作してほしいという依頼を受けます。

この扉を制作する際にも、ロダンはルネサンスの巨匠たちの作品を参考にしています。

ロダンが参考にした二人のルネサンスの巨匠が、ギベルティとミケランジェロです。

まず、扉の基本的な構成は、フィレンツェのサン・ジョヴァンニ洗礼堂にある、ギベルティの《天国の門》から着想を得ています。

ただ、これだけを見ると、あまり似ていないように感じるかもしれません。

その違いを理解するには、ロダンが最初に制作した《地獄の門》の模型を見る必要があります。

最初の模型は、左右二枚の扉で構成されたデザインが《天国の門》とよく似ています。

ロダンは、ここからさらにこの作品を発展させていきます。

そこから第二、第三の模型へと、かたちは少しずつ変化していきます。

そして、このように制作を重ね、第四の段階で現在ご覧いただいている姿が完成しました。

この第四の姿へと発展する過程では、バチカンのシスティーナ礼拝堂にある、ミケランジェロの《最後の審判》から大きな影響を受けています。

《地獄の門》の《考える人》の位置と、《最後の審判》におけるキリストの位置、さらに画面いっぱいに無数の人物が配置されている構成まで、とてもよく似ています。

このようにロダンは、ギベルティとミケランジェロの作品を参考にしながら、《地獄の門》を制作しました。

そして、この作品の主題は、フィレンツェ出身の詩人ダンテが著した『神曲』をもとにしていることで知られています。

さらに、ロダンが《地獄の門》を制作していた当時のフランスでは、詩人ボードレールの『悪の華』が広く読まれており、その影響も一部受けているといわれています。

ロダンは、この《地獄の門》の制作に実に二十年もの歳月を費やしました。

しかし、最後まで完成させることはできませんでした。

それでも、この扉のために制作された百八十六体もの彫刻は、ロダンの彫刻家人生における大きな転機となります。

ロダンは、このとき制作した彫刻の石膏型を組み合わせたり、一部を変形させたりすることで、大きな手間をかけることなく、非常に多くのバリエーションの作品を生み出せるようになりました。そして、それがロダンが彫刻家として成功する大きな要因となったのです。

だからこそ、この《地獄の門》はロダンにとって非常に重要な作品だと言えるでしょう。

それではここから、《地獄の門》に配置された彫刻をいくつか見ていきましょう。

今回は、ツアーではご紹介できなかった作品や、ぜひ知っていただきたい作品をいくつかご紹介します。

まずは、《逃亡する愛》です。

下にいる女性に男性がしがみついている姿が表現されています。

この男女は、ダンテの『神曲』に登場するフランチェスカとパオロです。

ちなみに、ロダンの《接吻》に登場する二人と同じ人物です。

この作品については、《接吻》のところでも簡単にご紹介しました。

《接吻》があまりにも美しく仕上がったため、《地獄の門》にはふさわしくないと判断され、その代わりに配置されたのがこの作品です。

そして、右側の扉の下には、《接吻》とよく似たテーマを小さな彫刻として見ることができます。

それでは、こちらの作品に戻りましょう。パオロは、フランチェスカの夫の弟でした。

二人は、許されない恋に落ちてしまいます。

しかし、最終的に二人はフランチェスカの夫に殺され、地獄へ堕ちることになります。

そのため、二人は互いに寄り添いながらも、苦しそうな姿で表現されています。

なお、ここにいる男性の姿は、ロダンの《放蕩息子》という作品を再利用して制作されたものです。

このようにロダンは、《地獄の門》の中でも複数の彫刻を組み合わせ、一つの新しい作品を生み出しています。

それでは、《考える人》をご覧ください。

その右側には、《うずくまる女》という彫刻があります。

そして、《考える人》の左側には、倒れ込む人物の彫刻があります。

いわゆる《落ちる男》です。

ロダンは、この二つの彫刻を組み合わせて、さらに別の作品を制作しました。

それが、《私は美しい》です。

今回のツアーを通して、ロダンが彫刻を組み合わせたり、分けたりしながら新しい作品を生み出していたことを何度もご覧いただいたと思います。

《地獄の門》でも、その手法を見ることができます。

それでは、《地獄の門》のご紹介はここまでです。

ちなみに、今ご覧いただいているこの青銅製の扉は、実はロダンの死後に鋳造されたものです。

ロダン自身は石膏原型だけを残しており、それをもとに没後、青銅で鋳造されました。

そのため、「これを本当にオリジナルと呼べるのか」という議論もありますが、現在ではオリジナル作品として扱われています。

なお、この青銅製の《地獄の門》は、現在世界に七点存在しています。

最後にもう一つお伝えすると、《地獄の門》の左右には彫刻が置かれています。

左側がアダム、そして右側がイヴです。

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