考える人
今ご覧いただいている作品は、ロダンの作品の中で最も有名な《考える人》です。
世界中の人々にとって、「ロダン」と聞いて真っ先に思い浮かぶ作品ではないでしょうか。
それでは、なぜこの作品が世界中で長年にわたり愛され続けているのか、一緒に見ていきましょう。
この彫刻が最初に制作されたのは、《地獄の門》のためでした。
この彫刻は《地獄の門》の上部に置かれ、地獄の世界を見下ろす姿として制作されました。
しかし、この時点ではそれほど大きな注目を集める作品ではありませんでした。
その後、この作品が独立した大型の彫刻として制作されると、一気に人々の注目を集めるようになります。
そして、多くの人々は「この人物はいったい誰なのか」と興味を抱きました。
《地獄の門》はダンテの『神曲』の《地獄へん》をもとに制作された作品であることから、自らが創り出した地獄を見つめるダンテを表しているという説が最も有力です。
一方で、ロダンが敬愛していたフランスの詩人ボードレールだという説や、ロダン自身を表しているという説もあります。
私自身は、どの説にも一理あると考えています。というのも、ロダンはこの彫刻について、「誰をモデルにした作品なのか」を明言したことがないからです。
そのため、どの説も正しいと言えるかもしれませんし、逆にどれも決定的とは言えないのです。
この作品は、《地獄の門》の中では小さな彫刻としてそれほど注目されませんでしたが、ご覧いただいているように大型の独立作品として制作されてから、世界中で広く知られるようになりました。
それでは、実際に作品をご覧いただきながら、さらに詳しく見ていきましょう。
ご覧いただくと、片手で顎を支えているのがお分かりいただけると思います。
特徴的なのは、右肘を右脚ではなく、左脚の上に載せていることです。
ぜひ皆さんも一度、このポーズを試してみてください。
実際にやってみると、上半身が自然と左側へねじれることがお分かりいただけると思います。
ロダンは、このようにあえてまっすぐ座った姿ではなく、少しひねった姿勢で表現することで、体のラインがより美しく見えるようにしました。
もう一つの特徴は、顎を支える手を、あえて体の大きさに対して少し大きく造形していることです。こうして人体の比例を意図的に変化させています。
これは近代彫刻を代表する特徴の一つと言えるでしょう。
人体を正確な比率で再現するのではなく、自分が重要だと考える部分を、あえて大きく、あるいは小さく表現して強調するのです。
そのため、この作品は近代彫刻の特徴がよく表れた代表作の一つと言えます。
なお、この庭園に展示されているブロンズ彫刻は、すべてロダンの死後に鋳造されたものです。
しかし、ロダン自身が制作した原型をもとに鋳造されていますので、すべて正式な作品として認められています。
それでは、《考える人》は現在、世界に何点存在しているのでしょうか。
十点でしょうか。それとも十五点でしょうか。
実は、この作品は皆さんが思っているよりもずっと多く存在しています。
現在までに、実に四十点が鋳造されています。
そして、そのうちの一つが、今ご覧いただいているこの作品です。
それでは、ゆっくりご鑑賞いただき、ご覧になりましたら次の作品へ移動しましょう。