ヘラクレスの間
次にご案内するのは、先ほどご覧いただいた王室礼拝堂が建てられる前に、礼拝堂として使われていた「ヘラクレスのま」です。
これまで見てきた部屋とは、規模がまったく違いますよね。
ここから、いよいよ「国王のアパルトマン」が始まります。
アパルトマンとは、直訳すると宮殿内にある独立した居住空間のことです。
とはいえ、国王がここで気楽に寝間着姿でくつろいでいた部屋だと思うと、それは少し違います。
むしろ、ヨーロッパ中から集まった貴族たちに、自らが「太陽王」であることを演出するための舞台だったと考えたほうがよいでしょう。
このような部屋が、この先全部で7部屋続きます。
それぞれの部屋は、太陽であるルイ14世の周りを巡る惑星を象徴しており、天井にはその惑星に対応する神々が描かれています。
この部屋の天井には、ヘラクレスが描かれています。
ヘラクレスが神となり、オリンポスへ昇っていく場面が描かれています。
ヘラクレスの周りには、力、忍耐、正義、そして慎重さを象徴する人物たちも描かれています。
これは、ルイ14世の英雄としての姿を表現したものです。
それでは、部屋の壁一面を覆う大きな絵、《シモンの家での晩餐》をご覧ください。
シモンがイエスを自宅に招いて食事をもてなしている最中、罪深い女マグダラのマリアが、自分の髪でイエスの足をぬぐっています。
この絵は、ヴェネツィアからもたらされた作品です。
かつてヴェネツィア共和国は、フランスとの友好関係を深めるため、自国の至宝であるこの作品をルイ14世に贈りました。
ルイ14世もこの作品を大変気に入っていましたが、あまりにも巨大だったため、ふさわしい展示場所を見つけるのに苦労したと言われています。
最初はルーヴル美術館などで保管されていましたが、その後ベルサイユ宮殿の増築が行われた際、この作品を展示するための特別な空間が設けられました。それが、この「ヘラクレスのま」です。
つまり、ヴェネツィアから贈られた貴重な絵画に合わせて、この部屋が新たに造られたと言ってもよいでしょう。
このヘラクレスのまは、国王のアパルトマンの始まりを飾る玄関口でもあります。
この巨大な絵画を最初の部屋に堂々と飾ることで、「我が国王は、このような貴重な贈り物を受けるほど偉大な存在なのだ」という印象を訪問者に与えることができたのです。
この壮麗な空間は、その豪華さにふさわしく、当時は晩餐会や祝宴の会場としても使われていました。
それでは、次の部屋へ移動しましょう。