アポロンの間
太陽の光を背に、4頭の馬が引く戦車に乗ったアポロンの姿が天井に描かれています。
アポロンは太陽神であり、ルイ14世が自らを重ね合わせた神でもあります。
太陽系の中心が太陽であるように、ルイ14世もまたフランスの中心だったのです。
部屋の中央にある空の台座には、かつて高さ2.6mにもなる銀で覆われた王の玉座が置かれていました。
ルイ14世はこの玉座に座り、臣下たちと国政について話し合っていました。
それでは、部屋の出口付近にあるルイ14世の肖像画をご覧ください。
ルイ14世の肖像画は、生前だけでも700点以上描かれたと推定されていますが、その数ある肖像画の中でも、最も有名な作品と言えるでしょう。
今でもさまざまな場所で使われています。
おそらくフランスに来てから、どこかで一度は目にしているのではないでしょうか。
今ご覧いただいている絵は複製で、原画はルーヴル美術館にあります。
もともとルイ14世が孫のフェリペ5世に贈るために依頼した作品でしたが、完成した絵をあまりにも気に入ったため、原画は自分のもとに残し、同じ画家に今ご覧いただいているこの複製を改めて制作させたと言われています。
複製とはいえ、王の権威と同じように、この肖像画そのものも非常に高い権威を持っていました。
「豊穣の間」でお話ししましたよね。
王の器にまで人々が敬意を表さなければならなかったように、この肖像画も同じでした。
この肖像画に背を向けることさえ許されなかったのです。
この絵に描かれているルイ14世は63歳です。
60歳を超えていますが、とても華やかな装いですよね。
私は特に、かつら、ストッキング、そしてハイヒールが目に留まりました。
まずは、かつらから見てみましょう。
十代で天然痘、20代で麻疹にかかり、その後遺症で髪が抜けてしまったと言われています。
それ以来、彼はかつらに強いこだわりを持つようになりました。
また、身長は約163センチと当時としても小柄だったため、高さのあるかつらを使って背を高く見せていたと言われています。
ハイヒールを履いていたのも、そのためです。
自らの威厳と同じように、背も高く見せるため、10センチ以上の高いヒールがついた靴を好んで履いていました。
ハイヒールには赤い色が使われていますよね。
赤い染料は当時非常に高価だったため、赤はお金と権力を持つ人物であることを遠くからでも示すステータスの象徴でした。
そして、このハイヒールによって脚のラインもより美しく見えました。
その肉体美を際立たせるために履いていたのが、ストッキングです。
当時の貴族男性にとって、脚のラインは非常に重要な美の基準でした。
ルイ14世は幼い頃からバレエを習い、引き締まった脚の筋肉を持っていたため、脚にぴったりとフィットするシルクのストッキングを履き、滑らかで力強い脚のラインを誇示していたのです。
しかし、この絵が描かれた一七〇一年頃、彼は痛風が悪化し、車椅子を使っていました。
それでも、力強い王の姿を強調するため、今ご覧いただいているように、たくましい脚で描かれたのです。
こうして話を聞いてみると、王が身につけた華やかな装飾品の数々が、1人の人間としての弱い身体を覆い隠すためのものにも見えてきませんか。
これで、国王のアパルトマンにある7つの部屋をすべて見てきました。
この先は、さらに広く、華やかな部屋が私たちを待っています。
ぜひ楽しみにしていてください。
それでは、隣の部屋へ移動して、次のチャプターをお聞きください。