睡蓮 — 第1楕円室
さあ、モネの『睡蓮』が展示されている最初の部屋に入りました。
中央のベンチにあいている席があれば、座ってゆっくりお話をお聞きください。
先ほど、この場所はモネが、ただ絵を見るだけではなく、精神的で神聖な空間にしようと考えてつくられたとお話ししましたね。
ですので、この空間ではできるだけ静かに鑑賞してください。
よければ、少しの間イヤホンを外して、静かに瞑想してみるのもおすすめです。
瞑想が終わったら、また続きをお聞きください。
まずは、この空間についてご説明します。
今いる1つ目の部屋と2つ目の部屋は、どちらも楕円形で、互いにつながっています。
そのため、全体の形は、学校の数学の授業で習った「無限大」の記号をかたどったようになっています。
無限大の記号は、数字の8を横にしたような形ですね。
このように部屋がつくられたのは、モネがこの空間で、時間と空間を超えた永遠を表現しようとしたからです。
そのため、作品も時間の流れに沿って配置されています。
まず、1つ目の部屋には夕暮れ時の『睡蓮』が、2つ目の部屋には朝の『睡蓮』が展示されています。
こうして、夕暮れ、そして朝へと、時間が永遠に繰り返されていくのです。
また、この空間には特別な照明を設けず、天井から自然光が入るように設計されています。
この光は、1日の時間の流れとともに変化し、天候によっても変わります。
つまり、光の変化によってモネの絵が違って見えるよう、計算してつくられているのです。
モネは建築家カミーユ・ルフェーヴルとともに、こうした空間の設計を細部まで考えました。
ここは、ただ絵を見るだけではなく、光と時間の流れの中で作品と一体になるような没入感のある体験を届けたいという、モネの思いが込められた空間なのです。
それでは、いよいよ作品を見ていきましょう。
モネの『睡蓮』は、モネが暮らしていたジヴェルニーの自宅の庭にある池を描いた作品です。
モネは、刻々と変化する光が生み出す一瞬の美しさを、絵の中にとらえようとしました。
でも、1枚の絵だけでは絶えず変化する光のすべてを描くことはできません。そこで、同じテーマで何枚もの作品を描いたのです。
『睡蓮』だけでも、約250点描いたといわれています。
その中でも、ここオランジュリー美術館にある8点は、『睡蓮』を代表する作品といえるでしょう。
1点1点を見る前に、まず作品に共通する特徴をご紹介しましょう。当時、モネは白内障を患っていたため、作品にはどこか幻想的な雰囲気があります。白内障の影響で、物がかすんで見えていたからです。
そして、ここに展示されている作品は、どれも驚くほど大きいですよね。
最も長い作品は、なんと12.75メートルもあります。1点の作品が壁一面を覆うほどの大きさです。
また、作品には額縁がないため、途中で途切れることなく、すべてがつながっているようにも感じられます。
モネは、ここに展示されている8点を制作する際、さまざまな技法も試しています。
少し近づいて見てみてください。柳の幹や枝は、長くまっすぐな筆づかいで描かれています。一方、池に浮かぶ睡蓮には、絵の具を厚く重ねる技法が使われています。
また、筆づかいを幾重にも重ねているため、近くで見ると形がぼんやりとして見えます。
そして、少し離れて見ることで、全体の形がよりはっきりと見えてくるように描かれています。
それでは、ゆっくりと作品をご鑑賞ください。見終わったら、次の部屋へ移動しましょう。